01026_企業法務ケーススタディ(No.0346):アクティビストが襲来した!(1)こいつら、一体何なんだ!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2019年1月号(12月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百十八の巻(第118回)「アクティビストが襲来した!(1)こいつら、一体何なんだ!?をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社グループ内上場企業 脇甘フーズテック株式会社 役員 凡田 蔵男(ぼんだ くらお)

相手方:
ハーゲン鷹田・アンド・パートナーズファンド (ハゲタカ・ファンド)

アクティビストが襲来した!(1)こいつら、一体何なんだ!?:
アクティビストとして有名な外資系ファンドが、グループ内上場企業の株を買い、大量保有報告書が提出しました。
社長は、グループ会社役員の凡田には、無視して放置するようにと指示を出しました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:アクティビスト(ファンド)とは
安く放置されている株式を一定数買って、会社にさまざまな働きかけをし、買った株価を上げて投資を回収する手法、というものが存在します。
このようなスタイルの株式投資を行う専門集団は、アクティビスト(ファンド)と呼ばれます。
アクティビストは、発言権を有する株主として認識される一定割合(大量保有報告書提出が求められる5%以上)の株式を取得し、この発言権を裏付けに、企業経営者に対して増配や自社株買いなどの株主還元の要求や、株主総会における議決権行使などを積極的に行う、株式投資専門集団であり、物言う株主とも呼ばれる方々です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:アクティビストから狙われる企業の特徴
アクティビストがターゲットとして選定するのは、
1 株価純資産倍率が1を割り込むのは当然として
2 相対的にかなり低い水準にあり
3 実入りが良く
4 ラクにこなせる本業はしっかりやって
5 カネはたんまり持っているものの、貯めたキャッシュで積極的な拡大や新規事業に乗り出すわけでもなく
6 かといって、配当や自社株買いで株主への還元をすることもなく
7 IRもほったらかしで
8 株価は低迷なまま放置している
といった趣の企業です。
ターゲットの企業の株式を買い進め、一定割合に至ると大量保有報告書提出という形で露見します。
そして、安穏としていた経営陣の経営手法を、株主という立場で厳しく精査し、各種改善要求を突きつけ、さらにはさまざまな法令違反等を指摘して、場合によっては提訴要求通知、さらに株主代表訴訟といった過酷な手段行使に出ます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:総会屋とはまったく違う、怖さ
総会屋の企業に対する働きかけは、株主総会という場面で、よく通る元気な声で不規則な発言をしたり、
「一般人としては、興味が掻き立てられるものの、会社経営とはあまり関係がない、役員個人の個人情報」
を暴露する発言をしたりして、株主総会を撹乱するスキルと実績があることを前提に、株主総会を平穏に済ませたいなら金銭その他の経済的メリットを提供せよ、というものです。
攻撃そのものはパワフルなものの、攻撃ポイントがはっきりしている分、防御もしやすく、さらに、法に触れていることが明々白々なので、撃退が可能という点に特徴があります。
ところが、アクティビストは、会社法が株主に認めた武器を知り尽くした上で、経済合理性と合法性を武器に、経済合理性や合法性に問題のある企業を、スマートかつエレガントに、徹底的かつ効果的に、追い詰め、改善を迫ります。
その活動理念や世間に対するメッセージや、チームメンバーの学歴や経歴のきらびやかさは素晴らしいものです。
こういう認識ギャップも手伝って、攻撃対象となった企業においては、いまいちピンとこず、その恐ろしさや猛々しさがわかるのは実際攻撃が始まってからで、また、攻撃が始まってから体制や心の準備を始めても、ときすでに遅く、後手後手に回って、いつの間にかゲームの主導権を握られている、という事態に陥りがちです。

助言のポイント
1.企業統治課題において、総会屋はすでに絶滅種となっているが、新たに、登場した、アクティビストに注意しよう。
2.特に、実入りがよく、ラクにこなせる本業だけ地味にやっていて、キャッシュリッチの無借金経営で、株主還元もせず、IRもほったらかしで、株価は低迷なまま放置している企業は要注意。
3.ある日、突然、見慣れないファンドが、5%を超える株式取得を報告し、その後は、発言権を裏付けにした、会社法が株主に認めた攻撃手段を使って、役員解任や代表訴訟も含め、あらゆるプレッシャーをかけてくることもある。
4.全体的な危機意識のなさ、事態を甘く軽くみることによる防御態勢構築の遅れが尾を引き、瞬く間にゲームの主導権を握られる。正しく恐れ、正しく身構えよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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