01058_「企業法務」の具体的内容>アセスメント・環境整備フェーズ(フェーズ1)>法令管理(フェーズ1A)

リスク管理活動の一種である企業法務においては、個別の法務活動を十全に展開する前提として、まず、適正なリスクアセスメントを行うことが重要です。

これは、一般的事業活動や、プロジェクトマネジメントにおいても、アセスメントや、フィージビリティ・スタディといった、ゲームルールやゲーム環境が、前提課題・先決課題として、意識的に先行されるのと同様です。

すなわち、企業法務を行うためのゲームルールやゲーム環境を把握する活動として、法令や規制環境の把握・管理が必要になります。

具体的には、企業活動に関わる法令・通達・条例のほか、裁判例や実務面での取扱慣行に関する情報の収集・整理が求められます(法令管理あるいは法令調査)。

そして、このような情報は、企業の属する産業分野や、企業の属する事業段階ごと、さらには企業の規模や上場・非上場の別によっても異なりますので、各企業の法務セクションや顧問弁護士(契約法律事務所)が意識的に収集・整理し、日々の法務活動に利用できる状態に置く必要があります。

また、法令や規制環境の調査・情報収集・整理といった規範の管理に加え、法が
「具体的事実を前提に、これを特定の規範にあてはめて、特定の法的効果が生じるか否かを観察する」
というロジックに立つ以上、規範にあてはめるべき具体的事実、すなわち、
「個々の企業活動がどのような状況になっているか」
という点の非法律的アセスメント(事実調査)も必要になる場合が出てきます。

このような事業活動を経済性や合理性の側面から状況把握や実体把握していく、という非法律的プロセスも法務の重要なオペレーションを構成します。

特に、この点は、顧問弁護士等の社外の専門家の手が十分回らないところであり、企業内部の専門集団である企業法務部が真価を発揮する場面です。

一般のビジネスパースンにとっては、裁判や紛議の場面で、弁護士は、法解釈や理屈を振り回しているだけのように誤解されているかもしれませんが、裁判や紛議の場面では、具体的事実とその痕跡たる証拠が決定的であり、また、法解釈は、裁判官の専権であり、弁護士が介入する余地はほとんどありません。

「汝(当事者や弁護士)、事実を語れ、我(裁判所)、法を適用せん」
という裁判手続きにおける役割分担の本質を描写した法格言のとおり、弁護士は、有利な法適用の前提を整えるべく、事実の把握と、痕跡の収集に奔走します。

その際、弁護士が必要とする事実や状況を、
「言語化され、文書化され、痕跡がされた、客観的記録」
として整理された資料を、
「戦闘に必要な武器弾薬等の軍需物資」
として、銃後で調達し、最前線で戦う弁護士に適時適切に届けるのが、有事における企業法務部の中心的機能・役割となります。そして、これができるのが、法的な考え方を弁護士と共有でき、
「法律」
という特殊言語・特殊文化を理解でき、企業活動に日常的にかかわっている企業法務組織のスタッフです。

その意味では、企業活動を法的側面から把握し、また、法適用の前提として、企業活動の実体や状況を
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化」
して把握する活動は、企業の法務安全保障という点からも非常に重要な意味と価値をもちます。

なお、文書や記録だけの理解・把握では不十分な場合もあります。

今後問題が発生しそうな事案や、新しいプロジェクトに関しては、関係書類を精査してビジネスゴールや状況把握に努めるとともに、時には、法務スタッフがオン・サイト・スタディー(実地調査)を行う必要も出てきます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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