いわゆる上場企業・大企業においては、ファイナンス(財務改善を意識したSPCを用いたファイナンス等)やM&A分野において戦略法務を実践することが多いようです。
これらの分野の戦略法務は、単純な法的知見だけでなく、会計・税務や、先端的な事業戦略が複合したものであり、かつプロジェクト実施のためのファイナンス、さらには金商法の開示規制等も関係するような高度なスキームを構築するものであり、技術的な色彩を強く帯びています。
このような点から、当該分野における戦略法務は、会計専門家や税務専門家、さらにはファイナンスや開示実務に詳しい金融や証券のプロ等を交えたオール・ハンズ・ミーティングを通じて、展開されていくことになります。
これら戦略法務に関しては、
「違法ではないが、あざとく、不当かつ不健全な印象を与え、世間の反発を招く」
という(非法律的)リスクが残ります。
戦略法務を採用するほとんどの企業では、これらのリスクを解消・低減すべく、リリースやIRの際に格段の配慮をし、また、戦略の真の意図が明るみに出ないようにします。
逆に、
「時間外・市場内取引で取得すればTOB規制を回避できる」
という法の盲点を利用してニッポン放送株を大量に取得して一躍筆頭株主に躍り出るという奇策を取ったライブドア元社長の堀江貴文氏は、
「全てに値段がついているということは、お金で買えないものはないということです。
プロ野球の球団だって買えるし、女心だって買える。
だからとにかく社会で力を得たいと思うなら、お金を稼ぐのがいちばん手っ取り早い方法なんです」
などと刺激的なコメントで世間を挑発し、かえって既存秩序からの反感を高めていきました(逆に彼なりの広報戦略であったかもしれませんが)。
同様に、法の盲点を突くアグレッシブな戦略でファンドビジネスを短期間で急成長させてきた村上ファンド代表の村上世彰氏も記者会見で
「カネ儲けすることは悪いことですか」
とコメントするなど世間の反発を招く対応を行いました。
以上のような点が関係したのかどうかは定かではありませんが、両者ともインサイダー取引を行ったとの理由で逮捕・起訴される等の事態に至っています。
いずれにせよ、戦略法務を実施する際には、その過激さ・先鋭さによって社会の反発を招き、全体・実質としての企業価値を低下させたり、当該戦略とは別の理由で報復される危険性があることには十分注意しなければなりません。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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