01107_経営政策・法務戦略構築フェーズ>法務活動・フェーズ2>戦略法務(フェーズ2B)>(4)種別>中小企業>請求に対する抗弁提出

1 時効

例えば、なんらかの取引行為がなされ、債権が生じた場合、本来ですと、消滅時効は10年であるという先入観があるため、当該期間中は支払いの請求に応じなくてはならないとも思われます。

しかしながら、短期消滅時効という法理を正確に把握し、効果的に用いることにより、債権の発生原因によっては、1年であるとか2年であるとかいう短期間請求を受けなかった場合には、合法的に当該債権が消滅していることを主張できる場合があります。

ここで、時効とは、ある事実状態が一定の期間(時効期間)継続したことに基づき、法律関係より事実状態を優先する制度です。

刑事事件の時効はよく知られていますが、民事・商事の取引関係においても時効制度は存在します。

一定期間不動産等を占有していると本来権利がないにもかかわらず権利を取得するタイプの時効(取得時効)と、債権を不払いのまま放置しておくとそのうち債権が消滅するタイプの時効(消滅時効)とがありますが、企業活動にとって重要なのは後者です。

すなわち、債権債務が約定期限に問題なく履行されていれば問題ないのですが、相手方担当者が請求漏れのまま放置する等ということは決して珍しくありません。

こういう場合、時効期間が経過し、債務者が
「時効だから支払いません」
と主張(援用)した瞬間、法律上、債務が消滅してしまいます。一般に、債務が消滅する時効期間は、
「民事10年、商事5年」
といわれており、原則としてはその理解で差し支えありません。

ところが、民法の規定をよくみると、5年より短い時効で消滅してしまう債権が相当数あり、これを戦略的に用いることにより、債務を短期間に合法的に消滅させることが可能となるのです。

2 相殺

売掛先が倒産しそうになった際などに、
「反対債務で相殺する方法で不良債権を事実上回収してしまう」
という方法も強力な武器として使えます(相殺の担保的機能)。

上記の応用テクニックとしては、あぶなくなった取引先に対して債権を持っている別の債権者と組んでこちらの債権を譲渡したり、担保枠に余裕がある債権者に債権譲渡を行い、担保枠を使った回収に相乗りすることにより不良債権の回収を図る、という方法などがあります。

債権譲渡は債務者である当該取引先にいちいち承諾を取ることなく、こちらが一方的に通知を発するだけで手続が完了しますので(民法467条)、
「取引先を飛び越して譲渡先との話をつければ、間答無用で実行できる」
という点で非常に有力な手段となります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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