コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)を実施する前提の問題として、
「企業内従業者を企業の法令違反行為に起因する不祥事の危険因子として捉えるべきか否か」
ということが問題になります。
平易な表現をすると、性善説(企業内従業者は倫理的に教化することにより企業の法令違反行為に起因する不祥事を行わないとみる)、性悪説(企業内従業者は常に企業の法令違反行為に起因する不祥事に関与する可能性があり、コンプライアンス経営にとって危険な因子とみる)のいずれの考えを採用するか、という議論です。
これらの考えの相違は、下記のとおり、企業内従業者全員が法令を適正に遵守できることを前提として教化・改善することを主眼とする体制を構築するのか(性善説型)、企業内従業者を
「常に法令違反の動機を有するリスクファクター」
と捉えた上で、違反ないしその計画や予備行動の検知・抑止を主眼とする体制を構築するのか(性悪説型、リスク・アプローチ型)、というコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)実施上のアプローチの違いとなってあらわれます。
この点を正面から議論している学説や裁判例等はありませんが、下記のとおり、大和銀行ニューヨーク支店事件判決は行員が不正を働くことを前提とした体制構築を求めています。
すなわち、裁判所も、性悪説に基づくリスク・アプローチを是とし、企業内従業者を法令違反の動機を有するリスクファクターと捉え、違反ないしその萌芽の検知と抑止を主眼とする体制を構築することが、会社法上の内部統制システム構築義務を充足する適正なコンプライアンス法務活動と考えているものと思われます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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