1 情報の収集・分析の重要性
予期せざる形で法令違反の不祥事が発生した場合、最も大切なのは、良質で正確な情報です。
ここに、
「良質な情報」
とは、
「1 正確な情報の収集 → 2 収集した情報の客観的な分析 → 3 現実的な展開の予測」
というプロセスによる付加価値が付された有事対応上有用な情報、という意味であり、単に正確というだけで価値のない情報を量的に集めればいい、というものではありません。
「良質な情報」
の入手・獲得のために必要なのは、上記のプロセスを確実に実施できる組織であり、これをどれだけ早いタイミングで作り上げ、動かすことができるかが、その後の有事対応に大きな影響を及ぼしてきます。
そして、上記の情報が整うまで憶測で物を言わない、という態度を取ることも必要になってきます。
報道機関の取材のプレッシャーに負け、すぐに謝罪を行ったり、遺憾の意を表明したりする企業も少なくありませんが、一旦このような態度を取ると、変更したり挽回したりすることが不可能となり、企業信用回復という点で大きな禍根を残すことになりかねません。
企業の法令違反行為に起因する不祥事の発覚があった場合にまずなすべきは正確な情報の収集です。緊急事態においては初期対応が全てを決するといっても過言ではなく、またこの初期対応も正確な情報に基づくことが求められます。
したがって、
「迅速かつ正確な情報収集」
は極めて重要な作業となります。
そのためには機動性の高い専門チームに強力な調査権限を付与して、火急かつ徹底した事実調査を行うことが大切です。
経営陣に事実調査の重要性について認識が不足していたり、さらにいえば、正確な情報が集まらない段階で、コメントを二転三転させたため、混乱を招き、信用を低下させ、企業損害を拡大してしまう、ということは不祥事対応に失敗する企業に共通する特徴です。
正確な情報に基づく対応が必要とはいうものの、不作為も法的な有責となるので、巧遅な対応もときに問題となりかねません。
正確な上、迅速な情報収集をするような合理的努力をすること、あるいは各有事対応組織が合理的な努力をしうるような体制作りが企業として求められることになります。
なお、不正確な事実認識に基づく判断や公式発表は予想のできない二次的な危機を産み出すもとになります。
すなわち、企業の見解が二転三転すれば、
「一貫性のない企業」
「有事対応能力のない企業」
との評価が生じ、その問題を起こした部門を超えて、企業全体として評価を下げる別のリスクが顕在化することになります。
無論、調査未了段階では
「ノーコメント・調査中」
との対応が一般的に推奨されますが、こういうコメントを発表するにあたっては、
「調査を行うにあたって何が問題になっていて、何時までにコメントできるのか」
ということについてもレスポンシブである必要があります。
そして、有事において事故情報を効果的に収集するためにも、何より、
「日常の企業活動の整理・検証」
が可能になっていなければならず、そこで文書管理体制が威力を発揮することになります。
すなわち、適正な文書管理システムの下、日常の企業の活動が正しく記録管理されている限り、違反事実の特定とその規模や時間的範囲まで容にトラッキング(追跡)することが可能となり、迅速かつ正確な原因の解明につながります。
運営管理コード:CLBP129TO131
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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