1 会社法の基本書・体系書
『法律学講座双書 会社法(第15版)』(神田秀樹著・弘文堂)
が最もオーソドックスなものとして挙げられます。
ただ、この本についての難を言えば、饒舌を嫌い、無駄を一切省き、ソリッドな構成を追求したせいか、もう少し説明が欲しいと思われる箇所がいくつかあります。
このような場合には、
『会社法入門(第12版)』(前田庸著・有斐閣)
『株式会社法(第4版)』(江頭憲治郎著・有斐閣)
も併用することが推奨されます。
会社法の条文を解説した実務書としては、会社法のコンメンタールが刊行途上ということもあり、やや手薄感がありますが、参照書籍として
『立案担当者による新・会社法の解説』(別冊商事法務)
等の利用も推奨されます。
ただ、このあたりの調査になると、常時会社法を専門的に調べる必要がある会社でもない限り、会社法の基本的知識を有する顧問弁護士(契約法律事務所)に専門的助言を依頼した方が効率的で便利かと思われます。
2 会社法の調べ方・使い方
会社法は、会社の規模に応じた規制がなされており、会社法を調べたり使ったりする場合は、この点をよくふまえて行う必要があります。
すなわち、会社法は、
「単一の法律で、“商店街のパン屋さん・八百屋さん”から“国際的な自動車メーカーやメガバンク”までの様々な会社と当該会社をとりまく利害関係者との複雑な利害調整をする」
という、ある意味無茶なことをしようとしています。
会社法の精級なテキストは、一読しただけで何が書いてあるか全く不明で、弁護士等の専門家による翻訳がないと、猛スピードで展開するビジネス活動の現場で生起する問題解決の道具としては役に立ちません。
これは、パン屋や八百屋の経営を巡る下世話な内紛(その実態は、夫婦喧嘩であったり、親子喧嘩であったりするもの)と敵対的TOBの対抗手段としての新株予約権の発行の是非のような先端的な議論を同じ土俵で論じようとするからであると思われます。
すなわち、本来であれば、会社法は
「パン屋・八百屋用」
と
「国際的自動車メーカーやメガバンク用」
とで、それぞれテキストを分けて用意すべきであったと思われます。
参考までに、会社法をユーザーごとのニーズに併せて、使うべきポイントに分けて整理したものとして紹介しておきます。
以上のとおり、
「零細商店から国際企業まで広汎に取り扱う」
という特性ゆえ、会社法や会社法の体系書はあまりにも抽象的でつかみ所がなくそのままでは使えません。
企業法務に携わる者としては、会社法のこのような特性をふまえつつ、所属企業やクライアント企業の規模に応じ、効率的に課題や問題点を発見するスキルを身につけなければなりません。
それとともに、当該企業が直面する状況に応じた会社法の使い方を確立するなどして、
「使えない会社法」
を
「企業法務の現場で使える武器としての会社法」
にカスタマイズする必要があるといえます。
運営管理コード:CLBP176TO177
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
✓当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ:
企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所