01179_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理>日本版SOX法>混迷する「内部統制」その1

日本版SOX法と呼ばれるものの実体ですが、これは、金融商品取引法24条の4の4が、上場企業に対して、事業年度ごとに財務計算にかかる内部統制を評価した報告書(「当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書」)の提出を義務づけた規制のことです。

当該規制が施行された際には、書店のビジネス書のコーナーには、関係書物が氾濫していました。

施行当時、株式を公開する予定が全くないはずの中小企業の担当者も日本版SOX法の書物を大量に購入したなどという笑えない実情もあるくらい(株式を公開する予定のない中小企業には金融商品取引法に基づく内部統制報告書を作る義務はありませんし、作ったところで提出する先はありません)、
「日本版SOX法バブル」
ともいうべき様相を呈していました。

企業法務総論では、会社法に基づくコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)に、企業倫理概念が紛れ込んだことにより議論が非常に錯綜した状況を述べましたが、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)についても状況は同じです。

金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)システム構築に際しての参照規範としては、本来、金融商品取引法の該当箇所(日本版SOX法と呼ばれる規範部分)及び法令に関する公的解釈基準(金融庁企業会計審議会内部統制部会作成の内部統制の評価及び監査に関する基準等)で必要かつ十分なはずです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

しかしながら、現在、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)システム構築にあたっては、上記公的規範に加え、
「米国SOX法」
「コーポレートガバナンス」
「コンプライアンス」
「ITガバナンス」
「企業倫理、
「CSR(企業の社会的責任)」
「SRI(社会的責任投資)」
「環境経営」
といった疑似概念・非法理的概念が次々と挿入された状態になっており、法律家、会計士、経営学者、経理倫理研究者、ITベンチャー、システム販売業者といった様々な者が、それぞれ独自の議論を展開しており、
「百家争鳴」
を通り越して、もはや
「Chaos(混迷)」
と評すべき状態になっています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

このように、株式公開企業の金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)に関するシステム構築及び運用業務は、無秩序な議論と無意味な情報が溢れているため、適正な法務関連調査のための情報収集・整理が困難となっています。

無益な情報や議論に振り回されることなく、必要かつ十分にして適正な法務関連調査を遂行するためには、まずは公的な規範をしっかり読み込み、解釈オーソリテイーを握っている者を特定した上で、正しい情報のみを取捨選択してスタデイーしていくべきです。

金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)に関するシステム構築及び運用義務への正しい対処法を示すと以下のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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