7 申立書を受領したら、即、弁護士が対応すべきこと
労働審判制度その1のように、労働審判手続は、第1回期日までの間に相当充実した答弁書を作成することが必要となるため、労働審判申立書を受領したら、ただちに、弁護士と答弁書の作成に入らなければなりません。
ここで、顧問弁護士がいない企業の場合には、申立書を受領してから弁護士を探し、弁護士が見つかってから従前の経緯を説明し、必要な証拠収集の指示を受けるという状況に陥ってしまいます。
したがって、顧問弁護士が不在の企業の場合には、労働問題が発生しそうな状況になったら、可能な限りその時点から顧問弁護士と契約し、それが不可能なのであれば、労働審判の申立てがなされることを覚悟して、証拠の収集・保全を行う必要があります。
8 第1回期日の変更が認められないこと
東京地裁では、原則として第1回期日の変更を認めない運用となっています。
9 処分権主義・弁論主義が厳格に適用されないこと
通常の民事訴訟においては、当事者が申立てた範囲内(例えば、残業代を支払えとの請求)で、かつ、当事者が主張した内容を前提として裁判所は判断を行うところですが、労働審判は非訟事件とされるために、処分権主義・弁論主義が厳格に適用されず、申立ての趣旨とは異なる審判が下されることがあります。
10 審判に対する異議の是非
調停が成立しなかった場合には、審判がなされますが、当事者は、その内容について異議を申立てることができます。
ところが、異議を申立てて訴訟に移行した場合であっても、判決は審判内容とほぼ同様のものとなる場合が多いため、異議の申立てをする場合には、訴訟費用の問題を含めて、慎重に検討するべきです。
なお、最高裁平成22年5月25日判決は、労働審判において労働審判官として関与した裁判官が、訴訟に移行した当該事件について、改めて一審の裁判官の立場で判決をしても、違法ではないとの判決を下しているところです。
小規模の地方裁判所においては、同様の事案が発生することもあるため、この点でも注意が必要です。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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