調達・製造法務における戦略法務上の考え方としては、
「モノ」
に関するリスクを転嫁、分散することが挙げられます。
例えば、製造物責任法においては、リース業者、レンタル業者、販売業者は責任主体となりません(当該製造物を輸入した場合、製造業者と誤認させる表示をした場合、実質的にみて製造業者と認めることができる氏名等の表示をした場合を除きます(製造物責任法2条3項))ので、PLリスクの転嫁・分散の方法としてメーカーとしてのポジションを取らず、顧客の固定資産等を提供するビジネスを展開する場合に売買ではなくリース・レンタルといった契約モデルを採用することや、商品販売にあたっても、販売元や販売代理店という立場で流通に関与することなどが考えられます。
また、製造物責任リスクの転嫁方法として、保険の購入が考えられます。
ただし、保険の購入にあたっては、保険約款をよく読んでおくべきです。
すなわち、免責事由があまりにも広汎で、イザというときに全く機能しない保険もあるので、高額のPL保険を購入する場合、十分な内容の確認が必要になります。
昨今、製品に関連する事故に絡み、損害賠償やリコール件数が増加しています。
独立行政法人国民生活センターの調べによると、消費者が何らかの損害を被ったとして同センターに相談がなされた件数は、2009年で実に6,169件に及び、過去10年間では4割増加しているとのことです。
このような現状に鑑み、大手損害保険会社を中心に、訴訟リスクを軽減するための保険商品の見直しがなされています。
例えば、東京海上日動火災保険株式会社では、2011年4月より、コールセンターの設置費用、不良在庫廃棄費用、リコールの際のコンサルタント費用などを保険金支給対象に加えたり、株式会社損害保険ジャパンでは、2011年2月より、部品メーカーがリコールを実施する際、これまでは保険金支給の対象外であった
「第三者が完成品の回収に要した費用」
をも補填することにしていますので、このような保険の活用も重要です。
さて、競争力・経営上の体力と総合的な管理能力に優れた企業が、安全な原材料の使用、廃棄認証・遵守認証・履歴証明の積極開示や厳格なコンプライアンス管理を打ち出し、従来の価格を維持しながら適正な総販売原価を下回らない範囲で総合的な品質を向上させていくことは、公正な競争として推奨されるべきです。
特定企業のこのような行動の結果、競争力・経営上の体力や総合的管理能力に劣る企業が、品質管理や安全性の面で比較劣位にある商品を従来どおり販売し続けた結果、消費者や社会から無視され、競争上不利な立場に置かれても、それは正当な競争の結果であり、自己責任に帰すべきものといえます。
その意味で、品質管理や安全性に対する信頼性が揺らいでいる状況は、競争力・経営体力・管理能力を有する企業にとっては、迅速に消費者や社会の要請に応え、他社を出し抜き、市場において競争優位を築く好機ともいえます。
ただし、独占禁止法は
「公正な競争」
を是とするものの、
「競争に名を借りた不当な方法による市場の支配や取引制限や不公正取引」
は厳しく規制します。
実際、安全性向上や消費者の信頼確保に名を借りた参入妨害や市場支配といった独占禁止法違反行為は数多く存在します。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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