昨今、円高・ドル安が進んだことなどが原因で、保有するデリバティブ(金融派生商品)に損失が発生し、経営難に陥る中小企業が増えています(金融庁の調べでは、2011年2月時点で、約1万9,000社に及ぶ企業が、デリバティブ取引で多くの損失を被っているようです)。
その中でも、企業がドルなどの外貨を有利な条件で購入するのに利用した長期為替契約(通貨オプション契約)が大きな問題となっています。
例えば、
1ドル=120円
のレートの時に、以後の5年間、
1ドル=100円
でドルを購入することができる契約をしたとします。
120円のレートが続けば、企業は20円安くドルを購入することができます。
しかしながら、いわゆるリーマン・ショックの後、
1ドル=80円前後
の円高が続いたことにより、
1ドル=100円
でドルを購入しなければならない企業は、逆に20円高くドルを購入しなければならないことになり、そのリスクが浮き彫りになりました。
このような事態を重くみた金融庁は、2011年1月、金融機関向けの監督指針を改正し、デリバティブ(金融派生商品)など、高いリスクの商品販売に関する自主規制を遵守しているか重点的に検証する方針を打ち立てました。
また、一般社団法人全国銀行協会の奥正之会長(三井住友銀行頭取)も、同月25日の記者会見で
「各金融機関が、企業などの顧客とのトラブルを具体的に解決できないケースについては、金融ADR(裁判以外の紛争解決)を活用することになる」
旨述べるなどしており、この問題の深さを物語っています。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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