債務者(会社の経営者を含みます)は、法的整理に入る前の段階で、将来の再起のため、ないしは代表者個人のため、往々にして、資産を隠匿したり、特定の債権者(親族や暴力的な債権者、あるいは再起に協力してくれるような債権者)に対してだけ優先的に弁済を行ったりしがちです。
このような事態を放置すると、
「(企業再建のために)利害関係人の利害を適切に調整すること」
や、
「(破産の場合において)債権者に対して平等かつ公平な清算」
をすることができなくなりますし、何より法的整理に対する信頼が失われます。
そこで、破産法、民事再生法、会社更生法においては、否認権の制度が定められています。
否認権とは、債務者がなした特定の財産隠匿行為や不公平な弁済によって支払われた財産について、原状に復させる(債務者や破産財団の下に財産を戻させる)制度です。
このような行為の存在が判明すると、他の債権者たちの信用を失い、再生計画や更生計画の賛成を得ることが困難になります。
民事再生や会社更生においては、職権で破産に移行することにもつながりかねませんし、その他、手続の進行が遅延する原因にもなりかねません。
旧法においては、破産管財人は、否認権の行使をするためには、
「訴え」
等によらねばならないとされており、常に訴訟を提起しなければ否認権を行使できず、破産手続の長期化の原因とされていました。
そこで、現在の破産法においては、民事再生法や会社更生法と同様に、
「訴え」
によらず、より簡易な、
「否認の請求」
の方法にて、否認権を行使することができる方法が採用されています(破産法174条)。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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