01376_倒産・再生法務>特殊な課題・新たな課題>新設分割制度の濫用事例

1 新設分割による事業再生手法

会社法施行後、債務超過会社であっても会社分割が可能であるとされたために、事業再生の一手法として、会社の健全部門を取り出して、新設分割の手法を用いて新たな会社を設立する方法が見られるようになりました。

この方法によれば、債務超過である会社Aは、優良部門だけを分割して新会社Bとし、負債については会社Aに残すことで、事業再生を図ることが可能となります。

この方法は、中小企業再生支援協議会が厳格な要件のもと、公平な債権者保護プロセスを経たうえで実施するいわゆる
「第2会社方式」
として用いられ、特に中小企業における事業再生の有力な一手法として利用されているところです。

2 会社分割制度の濫用事例

ところが、中小企業再生支援協議会以外のアドバイザーが介入した会社分割の一部の事案においては、適切な債権者保護プロセスが実施されず、不満を感じた債権者が訴訟にふみきる事例が増加しています。

これらの訴訟においては、高裁レベルで詐害行為取消請求が認められ、会社Bに対して価格賠償を命じた高裁判例(東京高裁平成22年10月27日判決)や、会社Aと会社Bを同一人格とみなして会社Bに弁済を命じた地裁判例(福岡地裁平成22年1月14日判決)が出てきています。

最高裁は、2012年10月12日、このような濫用的な新設分割について、詐害行為であるものと認め、取り消されるべきだとの画期的な判示を行いました。

また、2012年8月1日に法務省・法制審議会会社法制部会が取りまとめた
「会社法制の見直しに関する要綱案」
では、旧会社の債権者が新設会社に対して債務の履行を請求できる旨の規定を創設し、会社債権者の保護を図る方針が示されており、単に債権者のがれのための会社分割規定の利用は不可能であると認識しておくべきでしょう。

したがって、このスキームを用いた事業再生を実施する際には、これらの裁判例の存在を念頭に置いて、慎重な検討を行う必要があります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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