2010年9月7日、中国漁船が日本の領海である沖縄県尖閣諸島付近で違法操業し、その後日本の海上保安庁の巡視船に衝突するという事件が発生しました。
政府は、中国との外交関係に配慮し、この衝突事件の映像を秘匿しようとしましたが、同年11月、sengoku38を名乗る者が当該衝突事件の映像をYouTube上にアップロードを行いました。
その後、この sengoku38を名乗る者は海上保安庁に勤める現役の海上保安官であることが判明し、社会的事件に発展しました。
以上は政府機関におけるトラブル事例ですが、企業におけるネットトラブルにおいても、
「ネットトラブルの原因となった誹謗中傷の発信者を調べてみると、その実施主体が、実は当該企業内部の従業員であった」
ということが相当数見受けられます。
このような事態を予防するため、企業としては、従業員に対し、情報を統制することの重要性の理解に努めるほか、従業員一人ひとりから守秘義務誓約書を提出させるなどして、日頃から情報保秘の必要性、重要性につき理解・認識させる必要があります。
また、情報管理の観点から、場合によっては、従業員のパソコン使用状況を調査したり、電子メールの閲覧を行ったりすることも必要となります。
なお、従業員によるパソコン使用状況の調査については、
「パソコンは会社の資産であって私物ではないから、会社が会社の資産の運用状況を調べるのは当然である」
という論理も成り立ち得ますが、調査の可否についてはプライバシーの問題と密接に関わっており、
「会社による利用状況のモニタリングが無条件、無限定に可能というわけではなく、従業員のパソコン使用状況を調査することがプライバシー権侵害となりうる」
というのが一般的見解です。
実際、従業員の私用メールを上司が無断で閲覧した事件において、東京地裁平成13年12月3日判決は、
「監視目的、手段およびその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益を比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となると解することが相当である」
と判断しています。
もっとも、従業員から、予め
「必要かつ相当な範囲において会社が、私のパソコン使用状況を調査することに同意します」
旨の文書を徴収しておけば、後々、従業員からプライバシー権侵害云々の主張をされることを、ある程度、防止することもできます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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