01498_ゴーイング・コンサーン(「企業は永遠の生命を持つ」という前提ないし仮定)は、強引なコンサーン_1

今から20年とか30年前。

元号が昭和だった時代。

企業というのは、滅多に倒産しないものでした。

昭和時代、
「学校を出て就職した企業が定年退職するまでに倒産してなくなる」
などということは滅多に耳にすることはありませんでした。

決して潰れることのない企業に就職した我々のオトーサンたちは、
「終身雇用」
という、現在で は死語となったシステムの下、考えられないくらい長期間働き続けました。

また、辞めてからも退職金や企業年金をもらう形で、死ぬまで企業と付き合いが続きました。

まさしく、会社は永遠に生き続ける存在だったのです。

ところが、元号が平成に変わったあたりから、変化が訪れました。

突風のようにやってきたバブルはあっという間に崩壊しました。

そして、バブル崩壊と同時に倒産が激増しはじめました。

最初は、体力のないところの倒産から始まります。

零細企業がプチプチつぶれはじめ、これに連鎖して中小企業もドミノ倒しのようにバタバタと倒れました。

倒産の波は中小零細企業にとどまりません。

バブル崩壊以後、老舗の大手商社が倒産し、大手証券会社や銀行までもが倒産するようになりました。

「銀行は絶対つぶれない」
という神話がありましたし、ペイオフ(預金の払い戻し保証額を元本 1000万円とその利子までに限定する預金保護制度)が発動されることはない、ということも言われ続けました。

しかしながら、現実に、2010年9月に日本振興銀行が破綻し、1971年の制度創設後初めて ペイオフが発動され、ペイオフ限度超の預金を保有していた 3560人の預金者の預金約120億円 が、露と消えました。

また、2010年には、
「親方日の丸企業」
として
「絶対つぶれない企業ナンバーワン」
「大学生が あこがれる就職先上位ランクイン企業の常連」
だった世界的航空会社JAL(日本航空)までも会社更生法の適用申請を行い、事実上破綻しました。

「さすがに、きちんと国交省からお免状をもらって指導を受けながら商売している航空会社の破綻はもうこれ以上はないだろ」
と思っていたら、今度は国内航空会社3位のスカイマークが 2015年1月28日、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、事実上破綻しました。

東日本大震災後に発生したシビアな原発事故や、事後対応のまずさを見ていますと、天下の電力会社だって、次に発生する大震災で原発事故が発生した場合、会社が存続しているかどうかわかりません。

前述のとおり、昭和の時代においては企業倒産は衝撃の出来事でした。

しかし、平成も四半世紀以上たった現在では、我々の方でも
「どんな大企業であっても、あっさり倒産するもんだ」
ということがフツーに理解認識できるようになり、多少のことでは驚かなくなりました。

「倒産」
という事態にすっかり耐性ができた我々は、著名な大手企業の破綻話を聞いても、
「なんか、『最近流行っていないなぁ』と思っていたが、やっぱり、経営が思わしくなかったんだ」
と感じるくらいで、さほど驚かなくなってきました。

たとえば、明日、大手家電メーカーや大手自動車部品メーカーや大手金融機関がつぶれたとしても、私たちはたいして驚かないのかもしれません。

弁護士は、一般の方々よりも倒産という場面に立ち会うことが多い職業です。

自分の顧問先企業が倒産する場合もあれば、倒産を検討している会社から破産や民事再生の申請を依頼される場合、さらには、顧問先企業から
「取引先が倒産したので債権回収をどうする」
という相談を受ける場合なども含めると、
「弁護士は、ほぼ毎日企業倒産に接している職業である」
ということがいえるほど倒産が身近な職種といえます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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