嘘をつくことは犯罪でありません。
さらに進んで、法律上、人には
「ウソをつく自由と権利」
が与えられているようにも思います。
エンターテイメントの世界では、虚構の世界を構築したり、話を面白くするために少し誇張をしてみたり、ということがよく行われます。
事実に即したドキュメンタリー番組は誰も見向きもしませんが、誇張や虚構を極限まで取り込んだアニメやドラマは圧倒的な視聴率を叩き出します。
実際、テレビ報道では、
「取材した事実があまりにつまらなく、そのまま報道したのでは視聴率に対する悪影響が想定される」
という場合、ある程度面白くなるまで、誇張したり、虚構を混ぜたりすることが行われる場合があるようです。
世間一般は、つまらない事実より、面白いウソの方を望みますので、当然といえば当然です。
法律的な根拠について言いますと、憲法21条は表現の自由を基本的人権として保障しており、この人権の一部として、
「虚構の世界を構築したり、表現を誇張したり、その他ウソ偽りを巧妙に取り込みながら、物事を面白おかしく描く」という権利
も、憲法により不可侵の権利として保障されている、と理解されます。
無論、他人の社会的評価を低下させるような虚構や誇張を行った場合、名誉毀損行為として民事の賠償責任や刑事責任を課せられる場合がありますが、これも
「表現の自由は憲法上の保障が与えられる」
という大原則に対する例外的な位置づけです。
実際、週刊誌が政治家や著名人に関する報道を行ったことに関して、報道された側が報道によって名誉が毀損された、などとして訴えるケースがあります。
しかしながら、表現者・報道機関側が
「表現の自由」
という金科玉条のドグマによって守られているせいか、多少のウソ・誇張も大目に見られるようで、表現者・報道機関側の敗訴率は低く、かつ敗訴したとしても賠償額は弁護士費用も賄えないほど低廉なものしか認められません。
以上のとおり、嘘をついたり、物事を大げさに表現したり、脚色したりといった行為自体、法律違反どころか、憲法上の重大な権利として守られており、
「事実に反して他人の名誉を少しばかり毀損したとしてもある程度大目に見てもらえる」
というのが社会の現実なのです。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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