芥川賞作家の花村萬月氏は、ある小説で
「小説家とは、小説という小さなウソを本にして生活する稼業だ」
という趣旨のことを書いていました。
考えてみれば、エンターテイメントの才能というのは、
「いかに上手に、世間が楽しめるウソをつけるか」
という類のスキルといえます。
事実を正確に伝えるだけであれば誰でもできますし、無論、その種の才能に対して与えられる評価や報酬は大したものには成り得ません。
他方、世間が沸き立つような大掛かりな虚構の世界を構築できることは、一種の才能であり、このような
「ウソをつく」才能
は、ときに巨万の富を生み出します。
言い換えれば、
「“ウソをつく才能”に恵まれず“本当のことをそのまま、地味に伝えるだけ”のスキルしかない人間」
は報道機関に雇われるサラリーマンにしかなれませんが、
「“他者が真似できないようなウソをつくことができる才能”に恵まれた人間」
は小説家や映画製作者となって前者とは比べ物にならないほどの社会的・経済的成功に恵まれる可能性が開けます。
このように考えると、子どもに
「ウソつきは泥棒のはじまり」
などいう
「タチの悪い、まごうことなき、本物の、ハードコアのウソ」
を教えて「ウソをつくこと」をタブー視させるのは考えものかもしれません。
子どもを
「一流の表現者・創作者(クリエーター)」
にするのであれば、小さいころから
「上手なウソをつくスキルを身につけろ。ウソもまともにつけないと、不幸な人生が待っているぞ。『本当のことを、バカ正直に、みたまま、そのまま伝えるだけ』などという陳腐なスキルしかないと、しがないサラリーマンくらいにしかなれないぞ。それでもいいのか」
という現実に即した教育を行うことがあってもいいような気がします。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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