「資本市場に関する罪」
の代表的なものといえば、
ホリエモンが行った「粉飾決算」
と
村上氏が行った「インサイダー取引」
が挙げられます。
かつての
「ウソあり、インチキあり、ルールなしの無法地帯」
といった趣の資本市場であれば、ホリエモンの行った粉飾決算、すなわち、決算に関するウソつき行為もそれほど厳しく処罰されることはなかったと思われます。
むしろ、
「ズルをして巨額な儲けを手にした村上氏の行為」
の方が、一般の投資家の処罰感情を煽る可能性が高かった、ともいえます。
しかしながら、時代は移り、資本市場は、電気、上下水道、鉄道、道路と肩を並べる、れっきとした
“公共インフラ”
に様変わりしました。
資本市場を上水道になぞらえると、ホリエモンの行った粉飾決算を公表する行為は
「上水道に毒を流し込む行為」
ですが、他方、村上氏の行為は
「こっそりと自宅に配管を引き、水を盗む行為」
と同様に考えられます。
インサイダー取引、すなわち、水を盗む行為は、盗んだ水やそれにより得た利益を吐き出させれば(インサイダー取引に対する課徴金や罰金がこれに該当します)済む話です。
他方、粉飾決算を含む虚偽の会計報告を行う行為、すなわち、上水道に毒を投げ込む行為は、不可逆的に公共インフラを毀損する行為であり、
「カネを払ったり、謝ったりして済む」レベル
の話ではありません。
こういう背景があり、村上氏は罰金刑はしっかり課せられたものの執行猶予で済み、刑務所行きを免れたにもかかわらず、
「ウソつき行為」
をしたにすぎないホリエモンが刑務所に放り込まれた、という帰結になって現れたのではないか、というのが私の勝手な推測です。
以上みてきましたとおり、
「社会においても、法律においても、裁判所での取扱においても、日本は、全般的にウソに寛容である」
ということがいえますし、
「ウソも方便」
の諺のとおり、ウソが社会の潤滑油として機能している現実は無視できません。
とはいえ、ホリエモンが牢屋に放り込まれたように、
「資本市場に対するウソ」
など、ときに、厳罰に処されるウソがないわけではありません。
したがって、
「この種の“絶対ついちゃいけないウソ”をきちんと踏まえつつ、『社会にはウソが蔓延している』という現実を踏まえながら、小さなウソにいちいち目くじら立てず、また、ときにこちらもこの“方便”をうまく活用しながら、虚実・清濁をゴクンと飲み込むこと」
が、
「ウソに寛容なニッポンにおいて、社会生活を円満に送っていくためのコツ」
ということになりますでしょうか。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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