1 「企業は永遠の生命を持つ」という理論的前提
「ゴーイングコンサーン(going concern)」
という言葉を聞かれた方がいらっしゃるかと思います。
これは、企業会計上の用語で
「企業が将来に渡って無期限が事業を継続する」
との理論的前提をいいます。
要するに、
「企業は永遠の生命をもち、決して廃業や解散・清算などをしないんだ」
という理屈です。
また、
「ゴーイングコンサーン」
は
「企業は永遠に継続するのであるから、社会的使命・責任がある」 という意味で使われることもあるようです。
2 シエラレオネの平均寿命より短い企業の寿命
ところが、この
「ゴーイングコンサーン」
という言葉とは裏腹に、現実には、企業というのは、結構あっさりつぶれちゃいます。
実際、起業1年目で約30%近くの企業が消滅するそうです。
まさに今、日本の企業社会のそこかしこで、“幼児突然死症候群(一見ごく健康に育っているように見える乳児が、何の予兆もなく眠っている間に突然呼吸停止し、死亡してしまう病気)”を発症している状況といえます。
また、よくいわれる指標が、
「5年後の生存率は約40%、10年後では約25%の企業しか生存していない」
というものです。
古いデータになりますが、日経新聞が調べた倒産企業の平均寿命という統計データがあります。
1996年から2010年までの期間で、毎年倒産した企業について社歴を調べ、これを平均化していったものです。
これによりますと、一番平均寿命が短かった年で15.9歳、一番長かかった年でも24.6歳。
単純に平均すると21.05歳となります。
なお、これは
「きちんとした法的整理を行って死んでいった会社」
の平均寿命です。
「きちんとした法的整理を行って死んでいった」
とは、
「それなりの費用を負担して、葬儀屋(破産申立をする弁護士)と読経する坊主(破産手続きにおいて、破産者の財産の管理・処分を行う管財人弁護士)を雇い、葬儀場(破産裁判所)できちんとしたお葬式(破産手続という立派なセレモニー)を行って、法人格をきちんと消滅させた」
という意味です。
世の中には、破産手続きをすることもなく、借金を踏み倒して、事実上休眠してしまうような会社、すなわち
「葬儀費用すらなくなったため、葬式を挙げずに野垂れ死する」
といった会社も相当数あります。
きちんとお葬式を行えた企業のほかに、前記のような“暗数”も含めると、日本の会社の平均寿命って、15歳以下だと思われます。
ちなみに、10年近く内戦が続いたことにより世界で最も寿命が短い国の1つといわれる西アフリカのシエラレオネ(内戦が終了した現在では事情は別の状況であることは否定しません)ですら、平均寿命が25歳を超えているそうです。
これと比較しますと、日本の会社というものの短命っぷりは相当なもんで、企業が生きる社会が、人間の人生よりはるかに過酷なことが分かります。
3 「企業は永遠の生命を持つ」という虚構(ウソ)
以上からしますと、
「ゴーイングコンサーン」、
すなわち
「企業が永遠の生命を有する」
などという理論的前提は、相当、楽観的で、ゴーイン(強引)な仮説である、といえます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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