1 債権管理回収
商品やサービスをカネに変える営みを「営業」という、といいました。
しかし、営業の種別によって、
「商品やサービスが瞬時にカネに変わるプロセス」
もあれば、
「商品やサービスが一旦債権に変わり、債権(支払い約束)がさらにカネに変わる、という2段階のプロセス」
を踏む場合もあります。
例えば、コンビニエンスストアでおにぎりとお茶を買う場合は、いちいち契約を締結したり、売掛債権にして別途弁済したりするする、ということは生じ得ません。
他方で、自動車メーカーが、自動車用の薄板を一定のロットを鉄鋼メーカーから買う際、大量の薄板ロールを搬入した港かどこかで、現金の入ったアタッシュケースと薄板ロールを交換する、などということも生じ得ません。
後者の場合、鉄鋼メーカーから観察すると、一旦、商品は売掛債権に変質し、当該債権が金銭に変わる、といプロセスを踏むことになります。
ところで、すべての債権が期日に遅れることなく全額弁済されればいいのですが、一定の管理活動をして、また、事故が発生した場合、きちんと回収までフォローする活動が必要となりますが、これが債権管理・回収活動です。
2 会計・税務
企業の活動は一定の期間毎に区切られ、その活動内容が会計的に記録され、整理されていきます(期間損益計算)。
このような計算の結果は、経営成績(P/L)・財政状態(B/S)という二元的切り口で表現されて、投資家や債権者に整理して報告されるとともに、産み出された利益の中から一定割合の税金を税務当局に納める、ということが行われます。
このように、
「一定の期間毎にその活動の成果が整理され、ステークホールダーズ(企業をとりまく利害関係者)に報告する」
というのも企業の特徴的な営みといえます。
3 破産・再生とM&A
以上が、一般的で日常的な企業活動ですが、企業活動の中には、非日常的な特殊な活動も生じます。
まず、企業が債務超過により、あるいは資金繰りに失敗して支払不能に陥った場合、債務を整理(返済リスケジュールや債権放棄等)して再建したり、あるいは会社を解散・清算や破産して残った財産を債権者に分配する場面が出てきます。
そして、
「破産・再生あるいは廃業の手前で、企業を身売りする」
というときには、
「M&A」
という特殊な取引が登場します。
M&Aとは、企業そのものを取引対象とする、ということです。
普通の取引対象といえば、ヒト、モノ、カネ、ノウハウといった形で、個別経営資源毎にバラバラで調達するのですが、
「これをいちいちやっていると面倒くさくてしょうがない。ヒト・モノ・カネ・ノウハウが統合的にシステマチックに合体して動いている人格そのものを取引しちゃった方がいいんじゃね?」
ということで、
「企業まるごと買っちゃえ」
という趣で形成されてきたビジネス分野です。
4 第三者からの攻撃への対処
企業活動をしていると、取引等とは無関係の第三者から攻撃を受ける場合が生じ、そのようなリスクを想定した安全保障や、有事対処を行うべき場合も出てきます。
まずは、物理的な攻撃を加える外敵が考えられます。
具体的には、暴力団等の反社会的勢力から不当な要求を受けたり、何らかの嫌がらせや、生命・身体、名誉・財産等に対する危険をほのめかされたりする場合です。
攻撃は、暴力を伴った物理的なものだけではありません。
インターネット上で、誹謗中傷や名誉毀損、さらにはデマを拡散されて、企業の信用が致命的に毀損するような場合もあります。
これらの安全保障課題や、有事対処も企業活動の1つです。
5 国際取引
冷戦の終了に伴い、製品市場、労働市場、金融市場ともに世界の市場が単一化し、また、インターネットの発達により、欧米諸国である、非欧米諸国であるとを問わず、大量のヒト・モノ・カネ・情報がスピーディーに世界を行き来する時代が到来しました。
債権や株式に対する国際投資、外国のマーケットでの資金調達、為替や金利差を用いた金融派生商品、ジョイントベンチャー、国際的M&A、クロスライセンスによる技術取引といった技術的に高度な国際取引が、今や日常的に行われるようになっています。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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