01732_企業が行うべき最新ネット風評対策_(2)ネットメディアの登場により企業攻撃の態様は革命的に変化:昭和・平成初期の企業攻撃のあり方

2014年にはブルガリアにおいて、ネット上の情報が発端とされる銀行の取り付け騒ぎが起きたことが報道さましれた(ロイター通信2014年6月30日配信)。

無論、これは海外の事例ですが、現に日本でも、2003年にチェーンメールを発端とした地方銀行の取り付け騒ぎが起きています。

銀行の取り付け騒ぎは、ネット上の風評のみが唯一の原因とというわけではないでしょうが、ネットがメディアの主要プレーヤーとなっている現代の情報流通市場においては、大きな要因を構成することは疑いないものと推測されます。

殊に、信用を唯一無二の基礎として展開する金融機関にあっては、取り付け騒ぎのような事態は例外的であるとしても、ネット上の風評が、自ら、発行し、あるいは取り扱う金融商品の信用性、さらには、自身の株価にも多大な影響を与える可能性があるので、十分な注意と警戒が必要だと考えられます。

また、広く
「企業活動」
「事業活動」
ということを考えれば、例えば、学生の間で
「ブラック企業」
という風評がSNS等で拡散することも、採用活動に大きな支障が出かねません。

ネットメディアの特徴を浮き彫りにするために、従来の企業に対する攻撃行動と比較してみたいと思います。

企業の信用低下等を目論んで行われた、従来の企業攻撃の手法としては、不買運動のデモ行進や、怪文書、ビラの流布などが挙げられます。

昭和後期や平成初期においては、社会運動標榜ホニャララ(純粋な政治的信条を旨として行動する思想家や社会運動家ではなく、暴力団の傘下にあって、単純な利得行為や詐欺・恐喝目的で、形式的に右翼等を標榜する団体。以下、「社会運動標榜(中略)」といいます)による、街頭宣伝車(「街宣車(ガイセンシャ)」と略されることがあるので、以下、この用語を用います)を用いた示威的な企業攻撃です。

街宣車による街頭宣伝という企業攻撃を仕掛けられた企業には、信用面で相応なダメージが生じるため、従来、企業においては大きな脅威として恐れられてきました(令和に時代にあっては、企業側の総合的な対応力が具備されたことや、この種の攻撃を行う団体自体、いわゆる暴対法等によって活動が消極化しており、現在においては、それほど恐れられていないと推測されるところです)。

企業攻撃を生業とする多くの
「社会運動標榜(中略)」
は、フリーランスで活動している者も相当数おり、街宣車を所有しておらず、いわゆる
「レンタル」
で街宣車を調達していることもあるようです。

とはいえ、この種の特殊な車両(国旗の日章旗や事実上は国章の十六八重菊や「北方領土返還」といった政治的スローガンを描き、軍歌などを大音量で拡声できる機能を装備した、黒塗りの大型車両)は、一般のレンタカー会社で借りることはほぼ不可能であり、特殊な業者や同業者から借りることになるが、このレンタル料は通常より高額であり(街宣車に同乗する、特殊な出立の、特異な経歴と、特殊なスキルをもつ人員を、「抱き合わせ」でレンタルさせることがある、とも仄聞されるところです)、街宣車を用いた街宣活動による企業攻撃は、極めて高コストの活動であると推認されます。

とはいえ、街宣活動に基づく企業の信用低下の影響度合いといっても、街宣車の拡声器が到達する範囲は、最大限見積もっても500メートルが限界(ゴルフ場でフォアサインを発して届く範囲と同等と考えられます)、そして
「社会運動標榜(中略)」
が街宣車を回しているのは1日3時間~4時間程度が相場です(「社会運動標榜(中略)」の日常のライフスタイルや警察の規制強化といった状況を考えると、午後に活動を開始し、夕刻には活動を終了する、ということが多いようです)。

以上の攻撃実体を考えると、
「社会運動標榜(中略)」
による企業行動といっても、実は、企業にとってそれほど脅威ではなく、
「社会運動標榜(中略)」
が活発に活動しても、盤石な財政基盤を有する優良企業がそのことのみが原因となって破綻する、ということは少ないように思われます(無論、「もともと財政基盤が脆弱な企業が破綻が早まってしまった例」や、「蛇の目ミシン・光進グループ事件のように、焦る必要がないにもかかわらず、無駄に焦って、理性を失い、愚劣な行動に及んで企業崩壊寸前の危機にまで至ってしまった例」がないわけではありません)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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