法的リスクとしては、民事上の責任と、刑事上の責任があります。
1 刑事上の責任
刑事上の責任としては、名誉毀損罪や信用毀損罪が検討されますが、よほどひどい表現でもなければ、実際犯罪が成立するまでもないと判断されたり(可罰的違法性がない)する可能性も高いですし、また、そもそも広告出稿上の障害により、不特定多数に広告表現が届かないこともあります。
信用毀損罪にいう
「人の信用」
とは経済的側面における人の信用を意味し、判例によれば、
「人の支払いの能力又は支払い意思に対する社会的な信頼」
だけでなく
「販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含む」
こととなります。
「あの企業(法人)は資金繰りが悪く、倒産寸前だ」
というような事実無根な情報を流すことや、
「あの企業(法人)の部品はすぐ壊れる」
などの表現がこれに該当します。
2 民事上の責任
もちろん、名誉毀損は不法行為(民法710条、709条)に該当するなどとして、民事上の責任が発生する可能性も考えられます。
経済的信用を害さない場合でも、
「あの企業は、不誠実な企業(法人)である」
など社会的評価を低下させる表現は民法上の責任を追及されることもあります。
3 注意・警戒すべき従業員の不法行為責任に連座させられるシナリオ
気をつけるべきは、企業が組織として公式に競合企業の名誉や信用を毀損しない場合でも、使用者責任という法理(民法715条)を通じて、従業員の個人としての不法行為に連座して責任を負わされる場合がありうる、という点です。
最近では従業員、アルバイトあるいは採用内定者(学生)のSNSによる情報発信、発言が他社の信用を害する可能性があります。
この点について従業員教育等をしておかないと、企業が使用者責任あるいは、自らの過失行為による責任を負う可能性があることに留意する必要があります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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