裁判制度を利用するにあたって、絶対的に必要な前提となるのが、
「客観的なものとして言語化された体験事実を、さらに整理体系化し、文書化された資料を整えること」
です。
要するに、
「事実経緯を、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、文書化する」
という作業を貫徹することが要求されます。
それを筆者は
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
と呼んでいますが、これには、多大な時間とエネルギーを費消することを頭に入れておかなければなりません。
そして、それは、弁護士の役割ではありません。
弁護士は、事件の当事者ではなく、事件に携わったわけでも体験したわけでもないので、事件にまつわる経緯を語ることはできません。
無論、事件経緯を示す痕跡としてどのようなものがどこにあるか、ということも、直接的かつ具体的に知っているわけではありません。
弁護士は、そのあたりのストーリーを適当に創作したりでっち上げたりすることはできません。
弁護士の主たる役割は、
「記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、ある程度文書化された依頼者の、事件にまつわる全体験事実」(ファクトレポート)
から、依頼者が求める権利や法的立場を基礎づけるストーリー(メインの事実)ないしエピソード(副次的・背景的事情)を抽出し、こちらの手元にある痕跡(証拠)や相手方が手元に有すると推測される痕跡(証拠)を想定しながら、破綻のない形で、裁判所に提出し、訴訟を有利に運べるお膳立てをすることです。
いずれにせよ、訴訟を起こすとは、
「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」以外
に、気の遠くなるような資源を動員することを意味します。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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