事件を対処していく上では、前提リテラシーを実装し、当該リテラシーを基礎に、評価・解釈・展開予測のプロセスが必要となります。
弁護士が採用する前提リテラシーは、かなり悲観的なものとなります。
「裁判外で会談を持てば、チョチョイのチョイで解決できる」
という展開は予測されず、結果、訴訟しなければ事態進展せず、また、訴訟を提起しようとすると、コスパでパンクする、という展開が予測されます。
この「訴訟を提起しようとすると、コスパでパンクする、という展開」を支えるリテラシーは、
経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!
に記述しています。
ここで、問題が生じる可能性があります。
例えば、弁護士として(A)という悲観想定での展開予測を行ったものの、クライアントが(B)という楽観想定を強く信じた場合です。
加えて、クライアントが、弁護士に、(B)の楽観想定を前提とした課題対処を求めた場合です。
そして、案の定、弁護士の悲観想定(A)が現実化し、(B)の楽観想定を前提とした雑な手法が悪手となって、事件が不可逆的にどうしょうもない状況に陥る事態を懸念します。
この場合、たとえ弁護士として課題対処に関わったとはいえ、もともと、クライアントが愚劣にも信奉した間違った想定が原因で発生した災いであり、責任は、楽観想定を選択したクライアントに帰すことになります。
しかし、クライアントは、
「なぜ、もっと強く悲観想定を薦めなかった」
などと愚劣なことを言って、弁護士のことを恨みはじめます。
こうなると、醜悪な内部分裂が始まります。
契約不適合責任(瑕疵担保責任)は、除斥期間(時効)が定められており、このような内ゲバ(内部抗争)をやっているうちに、時間が過ぎて、請求権が消失した事例は実にたくさんあります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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