相手が訴訟慣れしているとなれば、百戦錬磨です。
当方が、あれこれ法的な正当性を実装した主張を展開しても、相手は、やはり、のらりくらり、曖昧戦略で、時間稼ぎをして、引き延ばすだけでしょう。
相手方は、
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真剣かつ誠実に裁判を遂行しようとすると、「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」以外に、気の遠くなるような資源を動員して、クライアントサイドにおいて、「事実経緯を、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、文書化する」という作業を貫徹することが要求されます
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と見切って、
「どうせ訴えてこないだろう」
と、ある意味、正しい展開予測の下に、こちらの要求を無視してくることが想定されます。
圧力がなければ、対話のみでは、まったく交渉が機能しません。
その意味で、(例えは不適切ですが、)核ミサイルを装備して、核ミサイルの発射ボタンを片手に、交渉し、破談となれば、ただちに、ミサイルを発射するような交渉なり戦争を想定しないと、
「足元をみられる」
ということになりかねません。
もしも、当方のクライアントが、
「(弁護士に相談しておきながらも)私は裁判を望んでいない」
という言いだすようであれば、それは、悪手中の悪手です。
前述の例で言うと、核ミサイルをもっていないことを暴露して、難しい安全保障交渉をするわけですから、外交手法として最悪です。
ですので、交渉に際しては、
「戦争上等」
「戦争辞さず」
「むしろ、戦争する気満々なんだけど、ま、そちらがどうしても話したければ聞いてやるわ」
という準備と環境を実装することが、先決課題となるのです。
「“戦争”だなんて、そこまで大ごとにせずとも、わたしの知り合いの有力者の仲裁で迅速に解決できるかもしれない」
と、言い出すクライアントもいます。
そのように思いたくなる気持ちもわからないではありませんが、魔法のような解決方法が(本当に)あるのなら、弁護士のやり方(不愉快で、面倒くさく、コストがかかり、期待値も各種条件・環境に依存する)よりも圧倒的に利便性が高いわけですから、弁護士に相談にくるより前に、試みればよかっただけの話です(どこかに、モヤモヤとした不安や不満があるから、弁護士に相談にきたのでしょうが)。
弁護士としては、有力者の仲介によって迅速に解決できた、という事例は寡聞にして知りませんし、たいてい、有力者に相談してもやんわり断られたりして、時間と機会を喪失した挙げ句、最後に、恥ずかしそうに、弁護士の門を叩く、というケースが99.9%、というのが現実です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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