企業によっては、経営コンサルタントをつけている企業があります。
企業が有事に直面したとき、経営者と経営コンサルタントに、(状況の認知、解釈、評価、捉え方の部分で)温度差が生じることがあります。
なぜなら、有事にかかわる安全保障課題というものは、ある意味、ビジネスパーソンにとっては、経済合理性を完全に逸脱した、実に厄介な問題だからです。
しかも、経営者と経営コンサルタントが長きにわたる関係である場合、その温度差はより大きなものとなります。
親しい間でチーム内での濃密な同調環境も手伝ってか、有事状況を、明確な論理と分析によって、言語化・文書化することなく、同じ風景を同じ感受性でみている、という双方の思い込みが邪魔をするからです。
この種のトラブルは、有事の専門家である弁護士としては、よく目にする光景です。
有事において、経営者と経営コンサルタントに温度差が生じるような場合、弁護士は、あえて、どぎつい言葉を使って、極端な論理や、毒々しい展開予測を使って、意図的に状況を誇張し、乖離を明確にし、曖昧さを徹底的に排除していくようなプロセスで、事態を冷徹に捉えていきます。
また、このプロセスを早急に行うため、ときとして、目的優先、儀礼軽視のスタンスで、クライアントである企業経営者に不快な物言いをすることがあります。
弁護士はミリタリーとして、企業の利益と軍事作戦の合理的遂行のため、無責任なデマを戒め、経営者に俯瞰させようとしているのです。
傍目八目とはよくいったものです。
人間は自分のことは決して俯瞰してみることができません。
経営者としては、弁護士の不快な物言いにとらわれることなく、その俯瞰した助言から、まずは、状況を評価する主体と、当該評価した状況を前提にした作戦目標や作戦範囲を一定の予算規律の下に決定する主体を決めることです。
そうでなければ、先に進むことはできません。
要するに、経営者は、経営コンサルタントと弁護士の役割は、まったく違うということを頭に入れ、有事にあたらなければならない、ということです(頭では理解はしているが、無意識下では同じと捉える経営者があまりにも多いのが現実です)。
ただし、会社を経営する弁護士は、この限りではありません。
経済合理性と安全保障課題、この相反する課題に精通している弁護士は、まれでしょう。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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