01841_有事の際のセカンドオピニオンの活用について

企業が有事に直面し、決定した作戦状況(「ゲーム」と筆者は呼びますが)を進めてきたはいいが、想定していたような進み具合ではない、あるいは関係者から提案され、ゲームチェンジを考えたとします。

このようなとき、たいていのトップ(プロジェクトオーナー)は、ほかの弁護士にセカンドオピニオンを聞きます。

医療でいうところの、患者が納得のいく治療法を選択できるよう、担当医とは別に、違う医療機関の医師に第2の意見を聞くことと同じで、経営者がセカンドオピニオンを求めて顧問弁護士とは違う弁護士に意見を聞くのは、めずらしいことではありません。

さらにいえば、すぐに転院し担当医を替え治療法を変えるわけではないのと同じで、まずは第2の意見を聞くだけです。

相談された弁護士が最初に助言することは、まずは、現在の作戦状況の認識、評価、見極めが先決、ということです。

なぜなら、もし、
「上手く行っている」
と評価できるのであれば、ゲームチェンジは不要だからです。

そして、
「上手く行っていない」
と評価したなら、なぜ、そのような仕儀に至ったのか、原因と責任を追及しなければなりません。

それは、簡単な課題ではありません。

戦犯を特定することとなるからです。

指示した人間は誰なのか? 

いつ何をどのように指示したのか?

指示を受けて遂行した人間は誰なのか?

いつ何をどのように遂行したのか?

5W2Hで、時系列でミエル化・カタチ化・言語化・文書化しなければなりません。

ここで注意すべきは、戦犯を吊るし上げるという話ではないということです。

戦犯を特定する、それだけです。

ゲームチェンジを行うのであれば、戦犯を排除することが絶対条件です。

戦犯が新しいゲームに関わると、新しいゲームも失敗します。

実際、ゲームの失敗の総括をあいまいにしたまま(=戦犯をぼかしたまま)、戦犯がチームに残存したまま、ゲームチェンジをした際、戦犯は、
「猫の粗相隠し」が如く、
自己保存バイアスを働かせ、ゲームを不合理なものに誘導します。

失敗をした人間の愚行の隠蔽工作のために、ゲームチェンジをするのではありません。

企業の利益のために、ゲームチェンジをするのです。

そのためにも、新しいゲームをキックオフする場合には、
「失敗した人間をはっきりさせ、新しいゲームに一切関わらせない」
ということが、作戦成功の絶対条件になるのです。

この一連の課題を達成するには、ゲームをはじめるとき以上に、時間と資源の動員が必要になりましょう。

失われた時間によって、戦況が不利にならないとも限りません。

ゲームチェンジは、それほど簡単ではない、ということです。

だからこそ、予防法務が大切になってくるのです。

弁護士はミリタリーとして、企業の利益と軍事作戦の合理的遂行の助言をしますが、企業として、弁護士をもっとも有益かつ合理的につかうのであれば、予防法務のために助言を求めることです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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