就業規則上の定年は60歳、継続雇用は65歳までとなっている会社で、満65歳を過ぎた従業員を雇用していました。
当該従業員については戦力として必要ない、と考えたオーナー経営者は、
「問題があってね。退職勧告を含めて、どのような段取りですすめたらいいだろうか」
と、弁護士に相談をしました。
「退職勧告をして当該従業員に辞めてもらう」
ために、弁護士にカネを払って、その段取りの相談をと考えたようです。
実はこれは、
「問題」
ではなく、明らかな
「事件事案」
です。
まず、段取り云々の前に、オーナー経営者において、
「不要有害な戦力を、定年後も漫然と雇用続けていた」
という経営判断上の致命的なミスを、受け入れなければなりません。
この反省の上に、
「経営判断ミスをどう尻拭いするか」
という
「事件事案」
として捉えることとなります。
オーナー経営者は
「退職勧告」
を解決すべき問題の前提として相談を持ち込んでいますが、これは、
「対話一辺倒」
という戦略手法であり、
「圧力」
「強制の契機」
を背後に設定しない限り、相手が拒否したら、それでゲームオーバーになります。
いわば、極めて粗雑なゲーム設計です。
これから行うべきプロジェクトデザインとしては、
1 定年退職後、何らの手続き経由することなく、漫然と雇用を続けていた場合、雇用契約がどのようなものとして捉えられるのか、という点のスタディ
2 その上で、上記雇用関係を切断・排除する、強制的手法が構築可能か、のスタディ
3 当該手法について、判例・裁判例として、争われた事例があるか、のスタディ
4 上記判例・裁判例を総括整理した場合、どのような手法を構築すれば、裁判に持ち込まれた場合であっても、当方に有利な状況を設定出来るか、のスタディ
5 上記構築手法を前提にした、相手方への法的意思表示の設計・構築と、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化と発出
6 相手方の出方に応じた、交渉の展開
という形で進めていくことになります。
これは、オーナー経営者が予想する以上の事件事案であり、解決には相応の資源(時間・カネ)が必要である、ということを意味します。
場合によっては、会社経営・存続の根幹を揺るがすほどの難事であることを認識すべきなのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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