「労働審判」
は、
「裁判」
ではなく、
「審判」
という、ある意味、司法作用とは
「ちょいと違うし、まあ、モノホンのガチンコ裁判ではなく、後から本格的裁判で争うことも可能な、テストマッチというか、前座というか、亜流の裁判モドキ。だから、裁判とは違う、ちょいと雑で、スピーディーで、独裁チックなことやってもいいよね?」
みたいな風体で導入されました。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2843027022032018000000?page=3
これまでの
「ゆったりとした時間的冗長性の中で、たっぷりと話を聞いてくれる」
という労働訴訟とは真逆の運営思想によって、進められます。
まず、期日変更はできませんし、話を聞いてくれるのも最初の期日で終わり、という有様(制度上3回の期日で終了することになりますが、よほど複雑な事件でない限り1回ポッキリの期日で終了する運用、のようです)。
言わば、
「期日が変更されない第1回期日までに最終準備書面とすべての書証を提出させられ、これに基づき、ほぼ最終的な心証形成がなされてしまい、期日当日、正式な尋問手続きではない場で、事情聴取として、突っ込んだ事実確認が裁判官主導で行われ、そのまま、最終的な心証形成が行われ、あとは、これに基づき、かなり具体的な和解の勧告(というか、ほぼ命令)が行われる」
というくらいの切迫した手続きが展開されるのです。
ですので、特に労働者から訴訟を提起された被告側の立場にある企業側が、一昔前、二昔前の労働訴訟の感覚で、この
「恐ろしく強権的な労働審判」
に臨むと、かなり、イタイ目にあう、ということがいえましょう。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2843027022032018000000?page=4
そして、裁判所は労使問題において、
「常に、当然企業側に立つ」
とは言いがたい、独特の哲学と価値観と思想を有しています。
著者の経験上の認識によれば、裁判所には
「会社の得手勝手な解雇は許さないし、従業員に対しては約束したカネはきっちり払わせる。他方で、従業員サイドにおいては、会社に人生まるごと面倒見てもらっているようなものだから、配置転換とか勤務地とか出向についてガタガタ文句を言ったり、些細なことをパワハラとかイジメとか言って騒ぐな」
という考えがあるようにみえます。
要するに、解雇や残業代未払いについては従業員側に立った判断をする傾向があり、他方で、配転や出向やそのほかの社内処遇については会社の広汎な裁量を認める傾向にある、と整理されます。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2843027022032018000000?page=5
<参考記事>
経営トップのための”法律オンチ”脱却講座
ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判
弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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