01976_弁護士を変えて控訴する場合の注意点_控訴期間

民事の訴訟事件において、地方裁判所で棄却の判決がくだされると、
「控訴するか」
「控訴しないか」
という選択段階に入りますが、
「控訴する」
「控訴しない」
は、単純に、手続き上の課題ではありません。

裁判は、緻密で複雑な外交戦です。

・ゲーム環境
・ゲームロジック
・ゲームの展開推移予測
・現実的期待値
・課題の克服可能性
これらを踏まえた、“利得判断”と“資源動員決定(クライアントの資源動員だけでなく、弁護士の資源動員の是非も議論になり得る)”をする必要があります。

ですから、通常、弁護士はクライアントに対し、訴訟を起こす前に、判決後の予測(あくまでも予測であり、絶対ではありません)も含めて、 判断の前提たる選択肢を抽出整理し、クライアントに上程するのです(01975参照)。

弁護士が“選択肢を抽出整理”するにも、クライアントが“利得判断”と“資源動員決定” をするにも、“時間的冗長性”を確保することが先決であることはいうまでもありません。

判決がくだされると、弁護士がすぐさまクライアントに対して、事件報告とともに明確な期限を案内するのは、この双方の“時間的冗長性” 確保のためです。

ところで、
「代理人が、控訴についてあまり強気でないから」
というような理由で、弁護士を変更してでも控訴をしたいと法律相談にくるオーナー経営者が、たまにいます。

「控訴する」
「控訴しない」
という根源的課題を、
・利得判断からするのか
・控訴ありきでの遂行課題とするのか
の議論において、(相談者が)新しい代理人に求めるレベル感の確認の必要性は大きいですが、それよりも何よりも、控訴期間が経過してしまったら、議論自体が無益となります。

要するに、
「控訴期間が切迫しているか否か」
は、法律相談以前の問題です。

さて、最近の裁判実務運用を前提とすると、裁判所は和解を強力に勧奨するのが通常です(裁判でもそのような場面があったはずです) 。

地方裁判所の和解勧奨を蹴って、棄却の判決を受け、
「控訴する」
としても、 高等裁判所では、そもそも外交舞台の構築ができることを前提に、より外交戦の比重が大きくなります。

検証するポイントとしては、
・(弁護士が)強気かどうか、ではなく、
・(控訴の)“理由”と、“証拠”があるかないか、
さらに言えば、
・(こちらとしての思いではなく)裁判所の感受性に響く理由や証拠の有無、
ですが、控訴期間の大半がすでに経過している状況であるならば、前触れなく相談を振られた弁護士としては、
「控訴期間遵守にまつわる責任一切は、負いかねる」
という厳格な前提で、法律相談を受けることになります。

なぜなら、
「控訴期間徒過」
という事態は、弁護士の倫理としては、絶対やってはならないし、加担することはもちろんのこと、曖昧な態度で関わったり、触れたりすることも忌避されるべき事柄だからです。

このような次第で、“時間的冗長性”の確保がネックで、
「控訴しない」
と判断せざるを得ない相談者(オーナー経営者)が少なくないのが事実です。

裁判は、単純に
「勝った」
「負けた」
というシンプルなデジタル処理課題ではなく、前述のように“緻密で複雑な外交戦”です。

だからこそ、 “時間的冗長性”の 確保を軽く考えてはならないのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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