「会社をたたみたい」
と弁護士に相談にくる経営者の10人中9人は、
「冷徹な経済合理性判断に基づいたものである」
といいます。
すなわち、
「競争環境・市場の状況を前提とすると、価格と品質両面での能率競争を、持続可能な形で展開することが不可能である、という認識・解釈・判断にいたった」
ということを口にします。
概して、資産はあるが、赤字垂れ流しで、構造改善の見込みはない、という状況です。
このような状況においては、正解はなく、正解があるかすらわからず、どの選択肢をとってもデメリットがついてくるというような(経営者にとって)未経験でアブノーマルな事態対処が目の前に存在する、ということです。
「会社をたたむ」
ことを、“唯一無二の目的”として、そのためには、いかなる手段も厭わないマインドで取り組めるかどうか、が、この難事達成の鍵となります。
ところが、相談にくる多くの経営者は、
「迷惑をかけてはいけない」
という強い思い込みにとらわれています。
思い込みが強いためか、カウンターパート(相手先)として存在する、組合労働者、一般労働者、卸先といった利害関係者が、笑顔で
「はいそうですか。じゃあ、私たちは静かに関係終了に同意します」
とは言わず、場合によっては、残された資産を狙って、妨害や攻撃に出る可能性があることを、 まったく考慮にいれません。
弁護士が、リスクの可能性を指摘すると、受け入れるどころか、否定します。
その結果、
「全員に迷惑をかけまい、として、結局、全員に不満を残しつつ、自身は財産を失う」
経営者があまりにも多いのが現実です。
まず、すべきことは、
「“唯一無二の目的”のためには、いかなる手段も厭わない」
というマインドセットです。
それは、
「我が身大事で、我が身だけを考えて、相手に迷惑がかかっても、必死で逃げ切り、追ってを振り切る」
という覚悟をするということです。
それほどの難事であり大ごとです。
正解がない状況にもかかわらず、あたかも、何か、
「正解や定石や適切なルーティンがある」
かのような錯覚に陥り、
「環境認識・状況解釈・目的設定・課題発見・手段構築・ゲームチェンジの準備」
ということを想定せず、何か、スケジュールのようなものを策定し、時間的冗長性を確保しないまま、突っ走ろうとする経営者が、難事を達成できないのは、いうまでもありません。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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