<事例/質問>
法廷もののドラマをよくみますが、ドラマの中の裁判と現実の裁判とではどんなところが違うのでしょうか?
プロの弁護士の方が、法廷ドラマをみていて違和感を感じることがあったら、教えて下さい。
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
法廷ドラマはスリリングで見応えがありますが、実際の裁判とはかなり異なります。
プロの弁護士が感じる違和感についてお話ししましょう。
まず、ドラマでは傍聴席がいつも満席ですが、現実の裁判はほとんどガラガラです。
コロナ前から同じで、傍聴人がいないことも珍しくありません。
また、ドラマでは弁護士が熱心に主張を読み上げますが、実際の民事裁判では事前に書面で提出され、法廷では
「準備書面を提出した」
と報告するだけです。
傍聴人には何が話されているのか全くわからないまま進行します。
証人尋問も違います。
ドラマでは裁判官が興味深く聞いていますが、現実ではあまり興味を示しません。
結論を先に決めていることが多いため、ただ流れ作業のように進めます。
ドラマのような激しい異議や驚くべき新事実の暴露もほとんどありません。
尋問では予想外の答えを引き出す質問は避けられ、すでに知っていることを確認するだけです。
証人が観念して真実を語るシーンも現実には少ないです。
証人尋問では嘘がつき放題であり、年間数万件の民事事件の中で偽証罪に問われるのはごくわずかです。
嘘をついてもお咎めなしなので、信憑性のある嘘をついた方が勝つことが多いのです。
民事裁判では真実や正義よりも、エゴ対エゴ、欲対欲の争いが中心です。
途中でやめたり和解で終わることが多く、判決まで持ち込むケースはまれです。
和解が多いのも特徴です。
判決言い渡しの日には原告も被告も欠席し、裁判官は結論をぼそぼそと述べるだけで理由は省略されます。
日本では、加害者にやさしく被害者に厳しいのが現実です。
パワハラ、セクハラ、モラハラなど、精神的苦痛の賠償、慰謝料は、本当に安いです。
弁護士費用の方が高かったりするのです。
「やられたらやり返す」
のは大損。経済的には、
「やられたら、放置」
「やられたら泣き寝入り」
が一番オトク、というのが現実なのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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