02025_中小企業の海外M&Aについて(教えて!鐵丸先生Vol. 33)

<事例/質問> 

中小企業の海外M&Aについて、知り合いの経営者が、皆ほとんど失敗している、と言っています。失敗する原因のようなものって、あるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

中小企業の海外M&Aについて、多くの経営者がほとんど失敗しているといえます。

では、失敗する原因は何なのでしょうか?

中小企業のほとんどが海外M&Aで成功していないのは、現実的な目的が具体的に明確に整理されていないことが主な原因です。

本音と建前が曖昧で、頭の中がカオスになっている企業や、
「国際進出をした国際的な企業の社長」
と見られたいという見栄で進出を自己目的化している企業は、確実に失敗します。

そもそも、なぜ中国やその他アジア各国に進出するのでしょうか?

その経済的意味はどこにあるのでしょうか?

ここでは倫理や道徳を捨て、純経済的に目的を考察します。

「生産拠点を日本からアジアにシフトすることを考える企業」
にとって、アジア進出のメリットは
「低賃金」
です。

つまり、
「現地の方を安い給料で雇える」
という理由で進出するのです。

だからこそ、
「最近は中国の人件費が高くなったからベトナムがいい」
「いや、ベトナムも高いから、ミャンマーやカンボジアだ」
といった話が出てくるのです。

要するに、生産拠点をシフトする形で中国に進出する企業は、中国が好きだとか、民間レベルの日中友好を進めたいとか、本場の中国料理が好きだとか、そういう動機ではなく、
「安くて豊富な労働力がある」
と考えて進出するのです。

だから、中国より安いところがあれば、経済的判断に基づいて進出先を変更するのです。

かつての植民地支配の時代、欧米列強は現地の労働力を廉価に活用できるという理由でアジアやアフリカ、中南米に生産活動を行いました。

現代の企業がアジアに進出する動機も、倫理や道徳を捨てて純経済的に考えれば、これと同様です。

また、別の企業は進出するアジアの国を、自社の商品を消費してくれる巨大市場とみて進出します。

この点でも、かつての欧米列強が文明レベルの低いと見なした現地人に対して価値ある商品・サービスを提供し、市場支配を目指したのと同様です。

現代の企業も、有利な競争環境を求めてアジアに進出します。

無論、企業はこんな
「時代錯誤も甚だしい下劣な言い方」
で動機を語ることはありません。

ジェントルでエレガントに響く進出目的(相互互恵による国際的な協調、対等なパートナーシップによる相互発展など)を掲げ、情報を偽装します。

「この種の韜晦をいけしゃあしゃあとカマし、実際の動機は植民地時代の欧米列強と同様のものを持ち、これをSMART基準に落とし込み、的確な指示を出し、目的を達成する」
企業は、まず間違いなく進出に成功します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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