02090_企業法務ケーススタディ:国際取引トラブルの効果的な対応法:まずは自国での提訴を検討

<事例/質問>

海外取引で揉めています。

顧問弁護士に任せていたら、訴訟地が相手企業の国と考えているようで、心配になってきました。

この方針は、妥当なものなのでしょうか? 

何となく、素人的にアウェイ感が漂うのですが・・・。

進め方での問題があるとすれば、どういう点が考えられるでしょうか?

また、勝率を高めるためには、何をすべきでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/アドバイス/指南>

1 まず、国際訴訟では、自国で戦うことを第一に検討すべきです。
これは、基本中の基本です。
アウェーからやってきた訴状は無視し、こちらから訴える場合は、自国で訴え、相手先に訴状を届けるのが、常道です。
ですから、訴訟を提起するとすれば、自国で訴えて、相手を引きずり出すでしょうね。
国際試合で、試合場所の好みを聞かれて、
「じゃあ、アウェーで」
と言う選手はいません。
それと同じです。

2 「理屈と膏薬はどこにでもつく」
ということわざがあります。
相手が責任を認めていない状況であれば、不毛な言い争いが長引く可能性があります。
ところで、お尋ねしますが、
「相手企業に提起する、ということは、御社としては、意味があるプロジェクトだと決断をくだした、ということなのでしょうか?」
これは、ビジネスとしては、とても大切なことです。

3-(1)そもそも、法律というもの自体、サイエンスではなく、イデオロギーです。
イデオロギーの運用を巡る因縁の付け合いのような泥仕合で、勝「率」といった定量的な表現はなじまないと思いますが、それでも、
「勝率を高めるためには」
という質問に答えるならば、裁判官に媚びへつらうことです。
媚びへつらうといっても、札束を与えたり、土下座したり、芸をしたりするわけではありません。
裁判官の好む事実と論理を披瀝し、その指揮に従うことです。
あるいは、媚びへつらいが通用する裁判官なり裁判所をゲーム環境として選択する、ということです。
その意味でも、自国での提訴を再検討されることをお勧めします。

3-(2)ご参考までに、国際管轄が曖昧なケースでも、下記判例のとおり、管轄が認められる場合もあるようです。
=====
【事件番号】東京高等裁判所判決/平成18年(ネ)第906号
【判決日付】平成18年10月24日
【判示事項】韓国法人が日本人に対し日本での子会社の設立を委任したが中途で委任契約を解除したことにより1か月分の報酬相当額を賠償すべきであるとされた事例
【掲載誌】 判例タイムズ1243号131頁
【評釈論文】ジュリスト1384号158頁
      税務事例40巻9号66頁
=====

結論をいえば、自分たちでコントロールできないことをアレコレ考えるのは、時間の無駄ですので、得策ではありません。

自分たちだけで確実にコントロールできることに還元して、
・選択肢の抽出
・プロコン分析
を行ったうえで、判断をくだすのがよいでしょう。

依頼していただければ、当事務所でも受任は検討します。

とはいえ、すでに他の弁護士が関与しているようですので、積極的に依頼されない限り、これ以上、詳細に踏み込んだ助言は控えます。

ご参考までに下記をご一読ください。

00930_企業法務ケーススタディ(No.0250):海外で訴えられた! その1  外国から訴状送達された場合の対応法

00931_企業法務ケーススタディ(No.0251):海外で訴えられた! その2 懲罰的損害賠償の敗訴判決など放っておけ

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです