02091_裁判は「ストーリー」の競い合い

裁判について、私はクライアントに次のようにお話をします。

裁判の本質:真実ではないストーリー

裁判は
「真実を発見する手続き」
ではありません。

判決は、原告・被告それぞれのストーリーを聞き、どちらのストーリーが
「聞いて心地よいか」
を判断して選ぶ場です。

これは、事実に基づいた冷静な判断というより、裁判官の感覚に響くストーリーを競い合うプレゼンテーションのようなものです。

原告・勝手が語るストーリーとは別に、裁判が独自にストーリーを描くこともあります。

いずれのストーリーも真実とは程遠いが、そのことは誰も気にしません。

裁判のストーリー

このため、重要なのは、
「当方がどんなストーリーを書いたか」
や、
「相手方がどんなストーリーを書いたか」
ではなく、
「裁判所がどのようなストーリーを描いているか」
を捉えることが最重要課題となります。

裁判が描こうとするストーリーは、判決になるまで明確には示されないことがほとんどです。

ただし、裁判の進行中に裁判官の質問や発言から、その意図が垣間見えることがあります。

進行中の段階で意図をはっきり示す裁判官もあれば、終始ポーカーフェイスを貫く裁判官もいます。

この見極めが大切です。

裁判の進め方と対応

まず、
「あまりに事実と異なるストーリーには根本的に納得できない」
という姿勢を示し、
「裁判所はどのような印象をお持ちでしょうか」
と投げかけることで、裁判官の反応を探ります。

この反応次第で、次回以降の戦略を具体化していきます。

ここで注意すべきは、裁判での
「ストーリー」
の意味です。

裁判における「ストーリー」の本質

裁判で語られる
「ストーリー」
は、事実とは異なります。

社会一般では、事実(客観証拠)を元に筋道を立てたストーリーを作ることはよくあります。

政府の公式発表やテレビや新聞での報道にストーリー性があるように、裁判でもそれと似た状況が展開します。

裁判では、
「明らかな嘘をついてはいけない」
というルールがありますが、客観的な証拠に反しない範囲で、巧妙に構築されたストーリーを語ることが許されています。

ただし、原告と被告はそれぞれの利益を守るため、
「客観証拠に反しない限りでのウソ」
もとい
「ストーリー」
を語り、競い合います。

裁判官はこの状況をニコニコと聞き分け、どちらのストーリーを採用するか判断します。

このため、裁判における
「ストーリー」
とは、
「客観証拠に反しない範囲のウソ」
と表現することもできるのです。

裁判で勝つためのポイント

裁判で勝つためには、裁判官が描こうとするストーリーを見極め、それに対応した戦略立案が必要であり、柔軟な手法が求められる、ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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