公正取引委員会により排除措置命令や課徴金納付命令が発令した場合、当該命令を受け入れるのであれば、各命令は確定します。
他方、各命令について争う場合は、審判請求を行い、審判手続に移行することになります。
しばらくの間は審判手続が存置されます。
2013年5月24日にはこれらを含む改正法律案が閣議決定されていますが、いまだ立法・施行はなされていませんので、2013年8月現在の法環境を前提に、実務的対応を述べておくこととします。
審判手続に関しては、審査官とは別の審判官が事案を審議し、各命令の妥当性を調べることになりますが、審査官も審判官も同じ公正取引委員会に所属する者である以上、審判手続段階で、審査の結果発令された命令が覆される可能性はほぼゼロと言っても過言ではありません。
したがって、審判請求するのは時間の無駄という考えもあります。
しかしながら、命令自体が全く反対に覆ることはないといっても、微調整され課徴金が減じられたりする場合や、排除措置が変更されたりする可能性はありえます。
審判に不服があれば、さらに(行政機関とは別の司法機関である)東京高等裁判所において(行政判断とは別の)司法判断を仰ぐことが可能ですが(独占禁止法85条により審決取消訴訟は東京高等裁判所の専属管轄)、これも審判請求をせずに命令を確定させてしまっては途を閉ざされます。
加えて、後述のとおり、東京高等裁判所の審決取消訴訟においては、実質的証拠法則が働くため、審判手続が事実上、最終事実審としての機能を有します。
すなわち、審判段階で手を抜くと後の訴訟での挽回は不可能となります。
さらに言えば、公正取引委員会に対して徹底して抵抗する姿を見せることにより、今後のさらなる調査等を牽制する効果も出てきます。
したがって、発令された排除措置命令や課徴金納付命令に少しでも異議や不服があるのであれば、原則として審判請求はすべきと考えられます。
なお、審判手続における争訟弁護に関しては、審査段階での意見陳述と同様の形で進めることになりますが、審判段階では、
「審査官が検察官役となり、審判官が裁判官役となり、命令の当否をめぐって審査官と企業側が争う」
という三面構造になります。
したがって、一方的に自己の主張を述べる意見申述における弁護構造とは違い、審査官の主張に対して企業側の主張を相戦わせる形になる点がやや異なります。
最後に、審判請求を行う場合、審判手続が開始されたというだけでは、すでに発令された排除措置命令や課徴金納付命令の効力は維持されますので、審判請求後、速やかに、執行停止の措置(独占禁止法54条、70条の6)も申立てるべきです。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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