01639_法律相談の技法5_初回法律相談実施までの具体的手順(3)_相談者が持ち込む「(間違った)相談内容」を矯正する

相談者のプロフィールや相談の前提状況も確認できました。

相談者に宿題を与え、相談事項にまつわる法的なリテラシーや解決相場観も概ね共有できました。

もちろん、概要レベルですが、問診票と持参いただいた資料から、時系列での経緯や顛末も把握できました。

いよいよ、法律相談開始です。

ここで、まず行うべきは、相談者が語る
「相談内容」
の矯正です。

すなわち、「質問」「問いかけ内容」の修正・矯正・補正・正常化です。

相談者は、素人です。

素人は、そもそも正しい質問、問いかけが出来ません。弁護士やリスク対処の専門家からみれば
「狂った質問」
「前提理解が誤っており、その点で全体として狂っている問いかけ」
「ゲームのロジックやゲームのルールやゲームの相場観を全く理解していないため、そもそもゲームとして成立しないプレースタイルの実践要求(無理筋、筋悪の事件の求め)」
をしがちです。

素人が、素人の頭と、素人の常識と、素人の経験と、素人の妄想するロジック・ルールとで思い描いた課題、というのは、そもそも
「ど手前」
のはるか以前で、致命的に間違っているかもしれません。

素人が語る、間違った相談内容を、矯正することなく、真に受け、そのまま相談をすすめると、時間と労力の無駄になる可能性が出てきます。

ですから、相談者の相談内容ないし質問については、
「正しい相談内容」
「適切な質問内容」
「まともな問いかけ」
となるように、置き換え・言い換え・再構築が必要となります。

「相談者がよこしてきた相談にそのまま答えれば正しい回答になる」ということはほぼない、
「法律の素人の相談者が語る質問や問いかけや実践要求はたいてい狂っている」
くらいに考えていたほうが無難です。

「いろいろおっしゃっていますが、整理すると、ご質問は、これこれこういうことですね」

「かなり遠大で壮大な展開を語っていますが、現実的な保有資源(カネや時間や労力や事務スキルや手持ち資料)と、実際の裁判ないし法律実務におけるゲームのロジックやルールを前提とすると、これをお求めになる、ということで整理してよろしいでしょうか」

契約書のチェックをしてくれ、というご要望ですが、私の国語読解能力や機能的識字能力からして、この『契約書』という『難解な文字の羅列』はまったく私の読解や理解の範囲を超えているので、代読の要請と意味把握の補助を乞う、ということですね」

契約書のチェックをしてくれ、ということですが、前提とされた契約内容の合理性の検証はよろしいのでしょうか? 
契約書としてミエル化・言語化・文書化・フォーマル化された、その内容たる取引内容やビジネスモデルについては、タームシートや取引モデルの資料をお持ちいただいておりませんが、この点の合理性や整合性は確認・検証の対象ではなく、たとえ、表現・叙述された取引内容やビジネスモデルが愚劣で狂ったものであったとしても、その点は検証や確認の対象ではなく、契約文書そのもののについての意味把握だけ、ということで、本当によろしいのでしょうか」

「『この英文文書に署名をしていいかどうか』とのお尋ねのようですね。
英文文書の言語的意味や内容や意義の解釈のプロセスが経由されていないようですが、まず、この英文文書のコトバは理解されていますか、文書の内容や意義は理解されていますか、署名をすることのメリット・デメリットの分析はされていますか、署名にメリットが乏しいようであり却って署名によるリスクが想定できない場合、署名留保や一部趣旨を限定して署名するなどの対案を検討されていますか。
以上について、ご不安であれば、各プロセスに還元し、それぞれ課題対処すべきと思いますが、これらの点のサポートが必要ですか?
ひょっとしたら、コトバも読解しておられず、意味内容の把握も懈怠され、さらにいえば、取引内容すらよく把握しておられず、『あたらしくみつけた海外取引先と、海外で流行っている新しいものを取引すれば、儲かる』という安易な考えで、内容も検証せず、読む努力もせず、雑に盲判(めくらばん)を押すつもりで、とりあえず、雑駁に弁護士に聞いて安心しとこう、などと無責任でイージーなノリで、丸投げされてます?」

と、間違った相談内容を、矯正し、訂正する必要が生じます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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