ある国で取得された特許権は、登録等を行って別途権利化の手続を取らない限り、他国では特許権としての効力が認められません(特許権における属地主義の原則)。
したがって、国内における登録をしていない、単に海外で登録されただけの特許権は、パクリ放題ということになります。
この点、米国特許法(271条(b)項及び283条)では、
「米国特許権を侵害する商品が米国外から輸入された場合、当該商品の輸出国での製造を差し止めることができる」
旨の規定があります。
かつて、米国特許権のみ行ない、日本には出願しなかった者が、米国特許権の技術範囲に属する日本の商品製造を差し止めるべく、
「オレの米国特許権を日本国内でパクるのはイカン! 米国特許法に基づき、日本国内での製造を差し止めよ!」
という訴訟を日本で提起したのですが、結果は、惨敗。
最高裁は、
「我が国においては、外国特許権について効力を認めるべき法律又は条約は存在しないから、米国特許権は、我が国の不法行為法によって保護される権利に該当しない。したがって、米国特許権の侵害に当たる行為が我が国においてされたとしても、かかる行為は我が国の法律上不法行為たり得ず」
という趣旨の判断をしています(2002<平成14>年9月26日判決)。
要するに、
「アメリカでどのような特許を取ったかもしれんが、所詮、よその“シマ”での話。こっちの“シマ”はこっちの“シマ”の掟でやらせてもらいまっせ」
という言い様です。
法律や裁判は、国家主権そのものであり、トップ同士が手打ちした暴力団の縄張り同様、
相手の「シマ」
に出張って、
「シマ」荒らし
することはご法度です。
それほど、日本でも特許権を主張したいのであれば、アメリカのみならず、日本でも特許を取得しておけばよかっただけであり、こういう基本的なところをサボっておいて、後から、キーキーギャーギャー騒ぐのは、あきまへん。
最高裁は、そういっているようです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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