発見・特定されたリスクや危機をどうするか?
リスクや危機が発見・特定され、これらが意思決定者である経営陣に共有され理解されるまでは非常に負荷がかかりますが、そこから先のプロセスは実はさほど大変ではありません。
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、リスクや危機はなくせますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、リスクや危機は予防できますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機は回避できますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機は転嫁できますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機は対応・対処できますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機はは制御できますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機は小さくできますし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機を受け入れ(リスクテイク)、乗り越えることもできるかもしれませんし(乗り越えられなければリスクテイクをやめればいい)、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機が現実化した場合のダメージ想定とダメージコントロール(損害軽減化)計画の立案も可能ですし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機が現実となってしまったことを受け容れた上で、発生し、現実化してしまったリスクやダメージについて働きかけ、
「大事を小事に、小事を無事に」
するための努力を尽くして相応の成果を達成することは可能ですし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスク対策や危機対策のチーム作りや専門家を調査・発見・依頼し、チーム体制を整備すること(ヒトの問題への対処)は可能ですし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、リスク対策や危機対策の予算を確保して十全な予算体制を構築すること(カネの問題への対処)は可能ですし、
発見し、特定しさえすれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、 リスクや危機に効果的に対処するための知見・経験・スキルや当該知見・経験・スキルを保有する専門家を調査・発見し、これらを実装すること(チエの問題への対処)が可能となります。
以下、リスクや危機の扱い方の要諦を述べたいと思います。
1 前提を変えればリスクはなくなったり回避できる
法的リスクは、法的三段論法によって、生じます。
法的三段論法とは、
「法規を大前提とし、事実を小前提として、事実を法規にあてはめて結論を導く推論の方法」
ですが、
特定の事業(小前提)があり、
特定の法令や契約や定款等(大前提)があり、
事業に法規をあてはめてみると、法令違反・抵触(あるいは契約違反や定款違反等)という結論が出た、
というプロセスを経て、法的リスクが顕在化するわけです。
法令や契約内容や定款等を変更するのは非常に大変です。
特に法令を変えようとすると、国会を動かす必要がありますし、一度成立した契約や定款を変更するのも無理あるいは非常に難易度が高いです。
ただ、小前提すなわち事業を修正したり、変更したりすることはさほど難しくありません。
事業の相手方を変える、事業の内容を変える、事業を複雑にする、事業を簡素にする、事業の一部を止める、事業の一部を加えるといった形で、小前提に修正や変更を加えれば、大前提の適用を免れたり、曖昧さや冗長性が出来して大前提が適用されない可能性が出てきたりします。
さらにいえば、事業自体をやめてしまう、ということが決断できれば、そもそも、命題自体が消失します。
2 取引リスク、契約リスクは上書きできる
取引リスクや契約リスクについても、簡単に制御できます。
取引リスクや契約リスクについて、リスクや危機が発見・特定されないまま契約書に調印してしまえばもちろん回避困難ですが、事前に発見・特定できれば、当該リスクや危機を免責させるなり、回避するなり、転嫁するなり、小さくする(損害額上限条項)なりして、その旨契約書に上書きしてしまえば、当該リスクや危機は完全に対処できます。
それでもなお、リスクや危機が対処できなければ、そんな契約やめちまえばいいのです。
契約自由の原則がありますから、不愉快な契約を無理強いして締結されることはありません。
他方で、魅力的な取引や契約であって、相応のリスクや危機にまつわるダメージやコストを受容してもなお余りあるベネフィットがある、というのであれば、自己責任において、リスクや危機を受容(リスクテイク)すればいいだけです。
そのような緻密なリスク計算を含めた高度な打算(経営判断)を乗り越えて、突如想定外のものとして出現した、といった取引リスクや契約リスクは、ほとんどお見かけしません。
取引リスクや契約リスクの多くは、 単なる、想定不足、展開予測の不備、リスクシナリオの未検証、楽観バイアス・正常性バイアスによる低劣で未熟で幼稚な思考ないし推定といった法務担当者(や社内弁護士や顧問弁護士)のミスや無能による
「人災」
です。
要するに、リスクの発見・特定ができなかったことで、対処想定以前に、危険な取引を無自覚に進めてしまった、という事態です。
一昔前、「不適切会計(実体は粉飾ですが、“粉飾”、という言葉は、それこそ不適切である、という社会的コンセンサスがあるようですので、これに倣います)」で有名になった大手上場企業東芝に関して、同社がさらなるミスで債務超過・東証二部降格に至った事件
の根源的原因も、このような
「人災」
にあります。
こうやってみると、改めて、
危機管理において最も重要で、かつほとんどの管理主体が難しいと感じている事柄は、危機ないしリスクの発見と特定である
という命題の圧倒的正しさが再認識されます。
3 「ダメージがたいしたことない」ものであったり「ダメージが不明確で曖昧で、長期間かけて相手を消耗させるほど損害の発生の有無・程度・額を徹底的に争える余地がある」なら、法的リスクや危機があっても、あえて受容する(リスクテイク)判断もあり得る
仮に、法的リスクや法的危機が発生しても、ダメージが想定可能で、コントロールや受容が可能なものであれば、慌てる必要もありません。
また、契約違反をせざるを得ないリスクや危機が生じたとしても、違約罰等の措置が定められておらず、損害の発生の有無・程度・額を徹底的に争える余地があるなら、契約違反(侵害論)はギブアップしたとしても、損害論において、損害論において、長期間かけて相手を消耗させる泥沼に誘い込む構えをみせて、大事を小事に、小事を無事に近づける戦法を取ることも考えられます。
参照:
00574_民事の被告弁護の手法:侵害論(注意義務違反等)は争えないとしても、損害や因果関係について、しぶとく争う
4 まとめ
こうやってみると、発見し、特定しさえすれば、法的リスクや法的危機などといったものは、いくらでも、回避し、転嫁し、制御し、小さくし、あるいはなくしてしまうことすらできます。
経験豊かなプロの企業法務弁護士の手にかかれば、どんな法的リスクや法的危機であっても、発見し、特定しさえできていれば、一定の時間的冗長性を前提として一定の資源を投入することにより、
「どないでもなる(如何様にも対処可能)」程度
のものに過ぎないのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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