01821_課題対処のためのリテラシーその2_見て見ぬ振りをするか、訴訟でやり込めるか

相手のミスやエラーや違法行為を無視・軽視して、見て見ぬ振りをするか、それとも、鬼の首を取ったかのようにして誇張して、嫌がらせの武器として、訴訟でやり込めるか・・・。

「相手のミスやエラーや違法行為を無視・軽視して、見て見ぬ振り」
をして、そのままおざなりの解決をしたがために、不安に苛まれ、不満が募る方がいます。

「相手のミスやエラーや違法行為を無視・軽視して、見て見ぬ振り」
の態度決定は、熟慮の末に、というわけではなく、クライアント自身も気づかぬ間に、という傾向が多いように見受けられます。

そしてどうやらそれは、側にいる弁護士に少なからず影響を受けてのようです。

「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
という言葉を多用されるからです。

要するに、
「見て見ぬ振り」
の態度決定をするクライアントの側には、
「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
という先入観をもつタイプの弁護士が多いのは事実です。

ところで、本当に、
「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
のでしょうか?

前提として、
「訴訟は、必ず勝たねばならぬものか?」
という根源的問いに関わります。

訴訟は、もちろん、
「正当な権利を実現するために、ロゴス(論理)とパトス(妥当性)とエトス(証拠や反論処理を施して信用を勝ち取る)をすべて実装した上で、絶対勝つ」
というのが本来的な使い方です。

他方で、憲法で裁判を受ける権利が保障されており、どんなくだらない主張や、どんなに証拠が整っていなくとも、訴訟そのものは憲法上の権利として提起可能です。

そして、どんなにくだらない、証拠が乏しい訴訟でも、どうせ勝てるからといって手を抜いて対応すると、欠席判決として負ける可能性がありますので、被告となる相手方(訴訟を起こされた方)は、手を抜けず、時間と費用と労力をかけて対応せざるを得ません。

そして、相手方は、そうやって手を抜けず、時間と費用と労力をかけたところで、勝っても得るものはなく、訴訟費用を相手に請求することもできません。

すなわち、
「訴訟は、必ず勝たねばならぬ」
という使い方もあれば、相手に対して不快感をぶつけて相手に無駄な資源動員を強いる、合法的な嫌がらせとして使うことも可能、という言い方ができてしまう現実があるのです。

もちろん、まったく根拠のない訴訟を提起すれば、不当訴訟として、逆に損害賠償責任を負担することになりますが、(勝つだけの確実な証拠はなくとも)相応の理由と根拠があれば、ポンポン訴訟を提起しても、憲法上正当な権利として許容されます。

実際、
「負けても構わない、圧力として使えれば十分」
「話し合いの場を作れれば目的が果たせる」
「とにかく捨て置け無い」
「大事にして相手に負荷をかけたい」
という形で、日々、勝つ見込みのない訴訟がかなりの数起こされているのですから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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