00343_国立大学医学部教授へ贈り物や接待をした場合の法的リスク

刑法198条は、
「賄賂を供与し、またはその申込みもしくは約束をした者は、3年以下の懲役または250万円以下の罰金に処する」
と規定し、公務員に公権力の行使に関して何らかの便宜をはかってもらうために、金品などを提供したりする行為を
「贈賄罪」
としています。

そして、ここでいう
「公務員」
について、刑法は、
「この法律において公務員とは、国または地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう」
と定義しています。

このように、公務員に対し、公権力の行使に関して何らかの便宜をはかってもらうために、金品などを提供したりすることは厳罰をもって禁止されています。

ところで、一口に公務員といっても、霞が関の中央省庁に勤務している一見して明らかな公務員から、かつての旧国鉄、旧電信電話公社のように、民間の鉄道会社や電話会社と変わらない業務を行っている公務員もいます。

その後、このような民間企業と同様の業務を行っていた公務員などは、所属先が民営化したり、また、行政改革推進法の施行など、一連の行政改革などによりその所属先が独立行政法人として組織改変などが行われたことなどによりその身分を失うこととなりました。

その一方で、独立行政法人造幣局など、一部の
「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められる」
業務を行う独立行政法人の役職員は、公務員としての身分を保持することとされる場合があります。

国立大学は、かつては、その名のとおり国が運営する大学でしたが、一連の行政改革等により、その運営主体が国から国立大学法人に移行することとなり、これまで公務員の地位を有していた国立大学の教授や職員は、その地位を失うこととなりました。

国立大学医学部教授といっても、もはや公務員ではない以上、例えば
「インフルエンザ新薬開発のプロジェクトに参加するための便宜を図ってもらうこと」
を目的にゴルフ接待をしても収賄罪は成立しないようにも考えられます。

しかしながら、国立大学法人法19条は、
「国立大学法人の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」
とし、刑法などの罰則が適用される限りにおいて、国立大学の教授や職員は、公務員とみなされますので、高中社長の行為は贈賄罪に該当する可能性があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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