01918_もめごとが起きたとき、相手とケンカをするには、「感情か、勘定か」の根源的二元対立構図からは逃れられないという現実_その1

もめごとが起きたとき、相手とケンカをするために、弁護士に相談するとしましょう。

相談を受けた弁護士(軍事と有事外交の専門家)としては、
「では、ケンカをしましょう」
とは言わず、まず、その目的を当事者(以後、相談者)に聞くことになります。

大抵の相談者は、
「目的といわれても・・・」
と、目的を明確に説明できないのが現実です。

そこで、弁護士は、このような仮説を披瀝することとなります。

目的仮説1
とにかく腹が立って疳の虫が収まらないので、一発、カマしておきたい。特に、目的があっての話ではなく、脊髄反射的に、対抗しておく(強いて目的をこじつければ、自分の感情の平静を回復し、カタルシスを得るため)

目的仮説2
何か深淵にして遠大な目的があり、その手段として、相手方への事実確認を行う。ただ、その目的は、誰にもわからない。

目的仮説1を前提に話を進めますと、相談者の本音としては、
「金はケチりたい、でも、感情の不安定は解消したい」
という愚劣な折衷案を希求したものでしょうが、これは最悪の選択であることは否定できません。

現実的な展開予測をしてみますと、

(1)どれほど覚悟しても、当初から明確な軍事目的をもって目的から逆算して戦略設計・作戦展開した場合に比べて、圧倒的に勝率は下がる。
要するに、
「金はかかるわ、勝率は下がるわ、で、最終的に、カネを失い、メンツまでも失うこと」
も想定しなければならないような不利な戦いとなる。
また、泥沼に陥ると、さらに資源消耗が要求される。

(2)戦う覚悟も、戦理に基づく戦略も作戦もなく、単なる、メンツの回復のため、展開予測もあいまいなまま、虎の尾を踏んづけたら、トラが怒って本気を出して、想定外(といっても、単に愚かにも想定をしなかっただけ)に威嚇される可能性がある。
だからといって、(1)のように
「 当初から明確な軍事目的をもって目的から逆算して戦略設計・作戦展開した場合に比べて、圧倒的に勝率は下がる。要するに、『金はかかるわ、勝率は下がるわ、で、最終的に、事業を失い、カネを失い、メンツまでも失うこと』も想定しなければならないような不利な戦い 」
を遂行する意思も覚悟も資源消耗するつもりもない。
結果、下手にトラの尾を踏んで、睨まれて、また、土下座して、誤って、おしまい。結局、メンツを回復するつもりが、さらなるメンツを怪我して、おしまい。

これを聞いたとたん、席を立つ相談者も少なくありません。

ジレンマに苛まれることになるからでしょう。

相談者のジレンマは、ケンカをしたいという本音が、勘定(エコノミクス)ではなく感情(センチメント)であり、思う結果に結びつかないことが直感的にわかってしまうことに起因する、と分析できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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