任意整理は、債権者の個別同意の集積体です。
和解契約の塊と考えてもいいでしょう。
契約自由の原則からすれば、どのような和解をしても自由、ということなのですが、
「債権者平等の原則」
から、返済原資を債権額に比例配分して、同じ期間で完済する、という制約が生じます。
また、契約相手が金融機関の場合、そのロジックに整合させないと、相手が拒否する、ということもあります。
そして、元本全額が、返済総額になります。
債権額をカットすることは、事実上無理です。
金融機関の立場では、 債権を放棄することは理由のない財産廃棄であり、背任と批判されかねないからです。
このような制約さえ守れば、設計の自由度はあり、イニシアチブを債務者が取れる、という利点があります。
他方で、民事再生は、裁判所が介入して、債権カットをしてくれる、という前提ロジックになります。
債権額はカットされるし、返済は短くなるし、債務者にとっては、いいことづくめです。
裁判所のお墨付きがあれば、債権者が無駄に抵抗することは少なく、同意採取も、楽です。
ただし、
「裁判所の介入」
というところに不確実性があるのは事実です。
ケースバイケースで一律解答はありません。
もっとも端的な方法は、カンニング、すなわち、(東京であれば)東京地裁20部への事前相談です。
詳細なシミュレーションの前提情報が必要であれば、(絶対性、確実性は保証できないものの)弁護士が、
「前提事実を整理したうえで」
事前相談を行うことは不可能ではありません。
なお、
「民事再生の際の再生計画がこうだから、任意整理の整理案もこうしろ、これで認めてくれ」
というロジックフローにはなりません。
任意整理と民事再生は別物だからです。
金融機関が再生計画を受け入れるのは、裁判所が関与し、
「公権力が債務者がズルや身勝手なことを言ってないかをチェックする」
という前提があるからです。
だから、
「債権額はカットされるし、返済は短くなるし、債務者にとっては、 いいことづくめ」
でありながら、金融機関も抵抗しないのです。
他方で、任意整理は、融資地獄に書いたとおり、債務者がゲームの主導権を握る、というゲーム環境は!その通りですが、金融機関としても立場があるので、裁判所という公権力が関わるわけではなく、在野の弁護士が平等性を担保してるだけの、言ってみれば、身勝手な与太話ですから、よほど合理性がなければ、応じ難い、という状況になりがちです。
すなわち、
・債務額のカットはしない
・返済期間も相当期間
というまとめ方でなければ、債権者にそっぽを向かれます。
ただ、そっぽを向かれても、それ以上債権者が現実的で効果的な対抗措置を取りにくい、というのは、やはり融資地獄に書いたとおりです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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