労務マネジメントにおいて、文書による謝罪を要求されたら、その対処は、
「みようみまねでつくってみた謝罪文を、弁護士にみてもらって、ちょっと助言をもらって手直しすればいい」
というものではありません。
あるいは、
・相手方が、「相手の望む対応(文書による謝罪)をしない限り、アクションを起こす」と言ったのはブラフであり、相手の要求に完全に応じなくてもアクションは起きない、との状況認識ないし解釈ないし状況推移想定を選択
・仮に、相手方が何らかのアクション(訴訟、ネットでの悪評拡散)を取ったとしても、被害想定として、対処可能である、との状況推移想定を選択
・相手方がアクションを起こすことを忌避して相手の要求に応じるより、相手方に謝罪文書という裁判外自白(決定的証拠)を与え、相手方のゲーム環境を劇的に改善するリスクないしデメリットの大きさの方が、全体として、デメリットが大きい、と功利上の選択判断
・時間的冗長性を確保するため、時間稼ぎの趣旨で、相手を刺激しない範囲で、相手に「絶望を与えず、希望も与えない」、玉虫色のメッセージを与えることで、やり過ごす
というような雑で楽観的な選択をするのもNGです。
そもそも、(相手が文書による謝罪を要求をしてきたとしても)
「(相手方への)応答を、文書で行うのか、口頭で行うのか」
ということは、選択課題に帰しますし、文書なら文書で、
・体裁
・表現
・マナー・トーン
これらの1つひとつに、詳細実施課題があるのです。
「労務問題において文書による謝罪を求められた」
ということは、
「単一かつ唯一の絶対的正解ないし定石としての対処課題にたどり着け、かつ、迷いなく、安易かつ単純かつスピーディーに行動に移せる、通常の陳腐なルーティン」
ではなく、
「様々な選択課題を内包する、ケースないしプロジェクト」
だと、
「大事(おおごと)化」
すべき課題として、“時間的冗長性”と“対処チーム組成”を考えなければなりません。
要するに、
「謝罪する」「謝罪しない(そのまま放置)」
という二者択一の “安易かつ単純かつスピーディーに行動に移せる、通常の陳腐なルーティン”選択ではない、ということなのです。
会社の規模にもよりますが、 取締役や執行役、あるいは役職のある従業員等は、プロジェクトオーナー(本件帰趨によって、最終的に被害ないし責任を負担することになる、筆頭利害関係人・当事者)に対し、きちんと選択課題を提示し、プロジェクトオーナーが合理的な功利分析の下、正しいプロセスによって選択できるよう、事態のマグニチュードにふさわしい対応環境を構築しなければなりません。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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