<事例/質問>
弁護士さんに頼んでいる裁判がいよいよ大詰めで、来週、証人尋問があります。
弁護士さんは、
「これからが本番です。気合いれて準備しましょう」
といろいろリハーサル等をやってもらえるのですが、やればやるほど、緊張が高まり、不安で不安でしょうがありません。
リハーサル段階ですでにグッダグダで、弁護士さんからは
「このままでは負けてしまいますよ」と言われています。
昔のことを聞かれても、覚えていないことも多く、うまく答えられる気がしません。
どうしたらいいでしょう?
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
証人尋問はただのセレモニーです。
一般には
「証人尋問は訴訟の最もドラマチックな場面」
とされますが、実際の民事訴訟では、事件の筋、すなわち勝敗は証人尋問開始前にほぼ決まっており、尋問はほとんどの場合セレモニーに過ぎません。
これは筆者の適当な感想ではありません。
弁護士会主催のセミナーで紹介されたデータによれば、民事裁判官のアンケートで
「証人尋問の後で心証が変更することはありますか?」
との問いに、7~8割近くの裁判官が
「尋問が終わっても心証の変更はない」
と回答しています。
まず、民事裁判官は証人尋問前に心証を決定しており、つまり
「どちらを勝たせるか」
を決めた上で尋問に臨んでいるのです。
また、大抵の事件では、証人尋問は裁判官に新しい事実を発見させる場ではなく、既に分かっている事実を確認する場です。最後に
「民事事件は関係文書を見れば、7~8割方は解決できる」
ということです。
訴訟に不慣れな弁護士や依頼者は証人尋問手続に入ると
「これから証人尋問!本番だ!」
と気合を入れますが、実際にはその時点で裁判官はほぼ結論を出しており、気合を入れるタイミングとしては遅すぎます。
つまり、尋問前に提出している文書の証拠(書証)が乏しければ、どんなに尋問で頑張っても無駄ということです。
裁判では、誠実さや正義や倫理が問われているわけではなく、約束があったかどうか、約束が実現されているかどうかを文書という強力な証拠で説明可能かどうかが重要です。
リラックスして臨むことが大切です。
顔色が悪い、うつむいていると嘘をついているように思われるので、元気よく、はきはきと話してください。
覚えていないことは
「忘れました」
と答えればよいのです。
これはクイズ番組ではありません。
5年前の昼食を覚えているほうが不自然です。
ただし、陳述書だけはよく読んでおきましょう。
特に、弁護士さんが適当に書いた場合、その矛盾を突かれると大変です。
詳細は、以下をお聴きください。
https://audee.jp/voice/show/62418
※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組の4番です
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
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