00047_M&A取引で必ず出てくる、デューディリジェンスとは?

M&A取引で、よく
「デューデリ」「DD」
などという言葉が出てきますが、これはどういう内容なのでしょうか?

「デューデリ」「DD」
とは、正式名称デュー・ディリジェンス(Due diligence)と呼ばれるもので、私なりにざっくり訳すと、
「(ボーっとしてたら、騙されるさかい)騙されんように、よう、注意しとかんと、あきまへんで」的プロセス、
とでもいうものです。

M&Aを結婚になぞらえると、お嫁さんにもらう予定の女性(買収対象企業)が、健康体か、過去の妙な男性関係をひきずっていないか、変な感染症に罹患していないか等、円満な結婚生活にとって障害となるべき事項を調査することがデューディリジェンスに相当します。

この話から透けて見える、常識では考えられない、異常ともいえる取引ルールがあり、これを踏まえていないと、
「デューデリ」
をなぜ、そんなに御大層に取り上げるのか、いまいちピンとこないと思いますので、この辺も含めて解説します。

すなわち、M&Aの取引の大前提として、
「よく調べず、漫然と相手を信頼して、『これはそれなりに良い企業だ』と思ってある企業を買ったところ、実際の中身は、ボロボロで、ほとんど価値がなかった」
という場合、120%、良く調べずに買った方がアホ、騙される方が悪い、というのが、この種の取引の基本中の基本中の基本ルールだからです。

さらにいえば、そもそも、車や不動産等とは違い、企業の値段には相場というものが観念しがたく、企業の値段自体、いってしまえば
「あってないようなもの」
であり、よく調べずに、適当な値段をつけてしまうと、大損することもあります。

そして、このような
「大損」
の事態は、全て買い手1人の全責任となるのです。

古代ローマ以来の
「買い手は注意せよ(=買い物に失敗したら、全て買い手が悪い)」
というルールが極めてシンプルかつ劇的に作用するのがM&A取引、というわけです。

だからこそ、この
「デューデリ」
という称するプロセスが、M&Aにおいて非常に重要、といわれるのです。

この
「デューデリ」
ですが、一般に、公認会計士の方が財務諸表の中味をチェックし、我々弁護士が権利関係や契約関係をチェックしますが、その他、対象企業が知的財産権を保有している場合弁理士さんが参加したりする場合がありますし、さらに工場跡地等の土地資産を保有する企業の場合、有害物質の有無まで調査するための専門機関が関与することもあります。

さきほどの比喩でいうと、一見美人で器量も良さそうな女性だが、よくよく調べたら、病気で、清算していない複数の男性関係があり、妙な感染症にも罹患していた、ということになると、男性側(買手企業)としては、持参金を多く付けてもらう等の経済的代償措置で調整したり、さらには結婚そのものをとりやめたり、という対応をとることになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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