00055_非欧米諸国への輸出ビジネスを行う場合には疎漏なく検討すべき、外為法の輸出規制

その昔、まだ、ロシアがソビエト連邦とか言われていた時代、日本の某メーカーが、ココム規制なんて聞き慣れない規制に反したカドでえらくバッシングされたことがありました。

その後、ベルリンの壁が崩れ、平成の世となりましたが、
「輸出規制なんて過去の遺物、今や貿易をもっと自由化し、イッツ・ア・スモール・ワールドだ」
なんて思っていると実は大間違いで、現在でもシビアな輸出規制が存在します。

すなわち、9.11のテロ以来、日本は、国際協調体制の中で大量破壊兵器の不拡散を行うべく、厳正な輸出管理規制を行っています。

しかも、最近の大量破壊兵器というものは、爆弾とか鉄砲とか見るからに物騒なものじゃなくて、民生品も使い方を変えれば簡単に細菌兵器とかに転用可能ということで、一見すると兵器とは無縁なフツーの民生品まで輸出規制品目として上げられています。

たとえば、カーボンシャフトのゴルフクラブですが、炭素繊維がミサイルの重要部品になるようで、インスタントコーヒーを作るためのフリーズドライ装置(冷凍凍結乾燥機)も細菌兵器を作ろうとする者にとっては喉から手が出るほどほしい装置だそうです。

あと、シャンプーに含まれているトリエタノールアミンなんて成分が化学兵器を作る上では重要なネタ成分になったり、自動車部品工作機械のうち特定の機械を使えば簡単にウラン濃縮が出来たりするようです。

貿易のプロや弁護士でも、こんなのいちいち覚えていられませんし、
「軍事転用可能な汎用品リスト」
というのも知らない間にアップデートしている場合だってあります。

実際、国際法務体制が相当整備されているべきはずの大手メーカーが、
「農薬散布用のヘリコプターを、許可無しで、アメリカとか中国とか韓国とかの問題なさそうな国に輸出した」
との理由で、外為法違反に問われ、警察沙汰になったという話もありました。

いずれにせよ、新たに、国境を超えてモノを売るような場合、注意が必要です。

なお、この規制は外為法(外国為替及び外国貿易法)が根拠法令です。

外為法というと旧大蔵省や日銀とかが所管してそうなイメージがありますが、所管官庁は、財務省ではなく経済産業省ですので、問い合わせや規制状況を確認する際には間違えないようにすべきです。

もっとも、ネット上、各種啓発のための情報開示がされておりますので、こういうものでスタディした上で、適否に迷った場合は、問い合わせ等を事前にしておくべきだと考えます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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