00624_企業法務ケーススタディ(No.0215):「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社マルチ・シティズン 代表取締役 蓮田 紡(はすだ つむぐ、48歳)

相談概要:
数年前に開発した人工知能エンジンの特許技術を中堅広告代理店に流用、真似された相談者は、相手に内容証明郵便の警告書を出しましたが、逆に、先行技術について指摘され、
「こんなのエセ特許。それ以上騒ぐと、無効審判申し立てしますよ」
と脅されました。
早急に、裁判所に販売差止と損害賠償を申し立てようと意気込んでいます。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: チザイ(知財・知的財産権)って何?
産業技術や文化市場では、アイデアや表現が自由かつ活発に交換されることにより、高度化されていきます。
これは、自由な往来ができる整備された街道によって経済が発展するのと同様です。
知的財産権というのは、いわば、
「私人に関所を設けさせ、これを使って他者を威嚇したり、通行料をせしめたりすること」
を是とする制度です。
技術や表現(知的財産権)を自由に使って、産業社会や文化市場で自由な活動をしようとすると、いきなり、
「そなたは、当方が国からお墨付きを得て設置した関所を勝手に通行しておる」
と、いわれてしまうのです。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【チザイ(知財・知的財産権)って何?】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:知財ダークサイドと知財バブル
2002年12月4日に、
『知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を推進すること』
を目的とする知的財産基本法が作られました。
知的財産権は、
「(アイデアや表現の自由な往来における)公認関所」
のようなもので、産業社会や文化市場の発展を阻害する、というダークサイドの要素を秘めていますが、そのマイナス面を無視し、やたらと知的財産権をもてはやす風潮が蔓延しました。
この風潮を、もてはやしている人間の低劣さを揶揄する意味をこめて、
「知財バブル」
などといったりします。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【知財ダークサイドと知財バブル】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 知財ホルダーに対する冷徹な扱い
特許権があるからと、強気に訴訟を提起したとしても、
「『なんちゃって特許』ともいうべき代物」
にすぎない実体である場合は、逆に、裁判所から
「その程度の発明に特許は与えられない」
という“塩対応”を食らうことが、判例にもあります。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【知財ホルダーに対する冷徹な扱い】その1ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【知財ホルダーに対する冷徹な扱い】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 同じ奉行所(権力機関)でも特許庁と裁判所では大違い
「特許庁、すなわち行政という権力機関」
とは別の、
「裁判所、すなわち司法府という別の権力機関」
によって、徹底的に調べ上げられ、あっけなく裁判で負けたら、販売差止に失敗するだけではありません。
特許を製造委託先や他社に使用許諾(ライセンス)して、特許使用料(ロイヤルティー)でも取っていようものなら、
「特許が無効になった以上、これまで払わされたロイヤルティーを全部返せ!」
といわれる可能性もあります。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【同じ奉行所(権力機関)でも特許庁と裁判所では大違い】をご覧ください。

モデル助言:
訴訟をしてもいいですが、勝つとは限りませんよ。
裁判所が、特許審査過程の意見書などを前提に、包袋禁反言の法理で“領土”を削り取られる判断をしたり、最悪、特許権者であり被害者として訴え出た当方の特許自体の無効を宣言することすらあります。
あくまで市井のケンカとしてやり返してやりましょう。
競合誹謗にならないよう注意しながら、公式に特許違反であることをリリースして世間の判断を仰ぐという争い方は検討する価値があるかもしれませんし、先方のビジネスモデルをこちらの人工知能エンジンで実現して、よりパワフルなソフトにしてリリースする方法(その際、先方よりさらに大きな広告代理店とジョイントベンチャーを組んで、資本力にモノをいわせ、上から叩き潰すとか )もありでしょうかねえ。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【今回の経営者・蓮田社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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