00694_文書管理の基本その2:処分証書と報告証書

訴訟においては、書証が決定的な重要性をもちます。

訴訟は、筆談戦、文書戦の様相を呈しているといえるほど、文書が偏重されます。

そして、書証(文書の証拠)においても、序列はあります。

それは、処分証書と報告証書という証拠価値における序列区分です。

処分証書とは、証明の対象である意思表示その他の法律行為(要するに契約の存在や内容が問題となっている場合の契約)を記載した文書(要するに契約書)をいいます。

契約書が代表例ですが、判決文、遺言書、手形、解除通知書等もあります。

処分証書については、裁判において特別の取扱ルールが定められています。

すなわち、
処分証書が偽造等ではなく、きちんとした作成者によって作成されたことが明らかになれば(真正に成立していれば)、原則としてその記載通りの事実が認定されますし、
処分証書が真正に成立していれば、本人尋問の結果よりも、処分証書の記載が尊重されることとなる、
という取扱ルールです。

要するに、
いい大人が契約書にサインしたなら、よく読まなかったとか、理解していなかったとか、そんな中身とは知らずに誤解があった、とかの寝言は一切通用せず、証人尋問とかでいろいろ泣いたり喚いたりしても一切関係なく、契約書の記載どおりの権利や義務が成立する、
というもので、これは、独裁的覇権的権力を有する裁判官すら拘束する事実認定のルールです。

これに対して、報告証書とは、 体験した事実を述べた文書に過ぎないため、法的に争いのある事実を間接的・補助的に裏付ける意味しかなく、処分証書ほど強力な事実認定拘束力はありません。

ちなみに、
「覚書」
「確認書」
といったタイトルの文書であっても、その内容が一定の法的合意を示すものであれば、処分証書に当たる、ということがあります。

したがって、タイトルだけで報告証書と判断し、文書を廃棄したり、イージーに文書に署名・押印する行為は危険です。

いずれにせよ、処分証書は、まず、作成段階で慎重に中身を確認する必要がありますし、また、作成後も厳重に保管するべき必要があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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