裁判官の頭の中では、全ての事実を同じ意味において認識することはしません。
裁判官は、常に、
「紛争解決を導く上で必須あるいは本質的な事実」
と
「そうでない事実(=決定的とはいえない事実)」
についても
「重要なもの(事件を解決する上で考慮すべき事実)」
と
「不要なもの(全くどうでもいい事実)」
という形で事実を階層化して認識していきます。
「紛争解決を導く上で必須あるいは本質的な事実」
を、法曹界の業界用語で
「要件事実」
などといいますが、提出文書においては、このポイントを押さえることが必要です。
その他の事実(業界用語で「間接事実」ないし「事情」と呼ばれる事実です)についても、無論、重要なものを中心に述べていくわけですが、ここで押さえておくべきことは、
「重要かどうか」
は
「社会常識や当事者の経験や認識から重要と感じられるかどうか」
と必ずしもイコールではない、ということです。
すなわち、事件解決に重要かどうかは、あくまで
「『学歴社会の頂点に立ち、俗世の芥から隔絶した静誰な生活を送っている裁判官の経験則』からみて重要かどうか」
ということです。
弁護士の中には
「依頼者の主観に基づく重要性認識」
に振り回され、全くどうでもいいことを延々議論し、裁判官をウンザリさせることを平然となさる方がいらっしゃいます。
当事者の方は
「自分の言いたい事は全て言ってもらってスッキリした」
と感じ、弁護士も
「どうだ! 見たか!」
としたり顔ですが、フタを開けてみると、無残な敗訴判決になっている場合が少なからずあります。
したがって、常に、事件の経緯や背景を語るときは、
「裁判官目線で、裁判官の嗜好に合わせて、適度に行うこと」
が必要です。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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